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「ブラックライダー」(東山 彰良) [SF]

『このミステリーがすごい2014』で3位とは驚きだ。これがミステリ??そうは思えないんだがなぁ。SFであることは確かだと思うが。なのに、『SFが読みたい2014』では18位。この差はなんだろう? ま、昨年の日本SFは豊作だったからか。
 昨年のミステリは1位も『ノックス・マシン』でむしろSF寄りなので、ミステリは相当不作な年だったんだろうか?(実際読みたいと思う作品はなかった。普通は2,3作品くらいはメモして後から読むのだが。)

ブラックライダー

ブラックライダー

  • 作者: 東山 彰良
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/09/20
  • メディア: 単行本


 で、この作品、ポストアポカリプスもの(核戦争後の世界が舞台)で、なおかつウェスタン(西部劇)であり、かつミュータントものであり、宗教テーマでもあり、戦争ものでもある。凄い組み合わせだ。こういう変わった設定の作品はなかなか無いだろう。

 必然的にというか、当然というか、大作にならざるを得ない。600頁の大部である(但し、1段組なのでバカ長いというほどではないが)。文体が翻訳調であまりこなれておらず、また登場人物がやたら多い(のに人物リストが付いていない)ため、読むのに時間がかかった。特にまんまウェスタンの第1部はかなり冗漫で、読むのがやや辛かった。投げ出そうかと思ったくらい。もう少しシェイプアップできると思う。

 アメリカ南部・メキシコを舞台に、食糧不足で人肉食が普通に行われている異様な社会が舞台である。馬泥棒を追う連邦保安官(=元強盗w)と、悪党一家のレイン兄弟。そしてヒトに寄生・感染する凶悪な人喰い蟲の出現。

 第2部。牛と人をかけ合わせて作られた食用牛(二足歩行)から出現した高知能のマルコの成長と出奔。蟲への対策の研究。アイデンティティーに悩むマージナルマン的かつ求道的な探求の様子が描かれる。このユニークなキャラはなかなか魅力的だ。

 第3部でマルコが宗教的指導者となって崇拝者を集めて山奥に作った(この過程が省かれているのはイマイチだが)コミュニティに連邦が討伐軍を送り、すさまじく血なまぐさい戦闘場面が延々続き、夥しい人間があっさりと死ぬ。その残酷描写が徹底している。このあたりも読者を選ぶところだろうが、作者の筆力は凄い。

 様々な、癖のある「濃い」キャラクターたちが入り乱れて、それぞれの生を必死にあるいはずる賢く生きる、その交錯する群像。苦悩と欲望とロマン。最後には伝説的な歴史となる、聖書的な展開(実際、聖書からも多く引用がある)。
 作者のアメリカやメキシコ、そしてキリスト教への造詣はかなり深いと見た。力作。しかし、強くはお薦めしない。
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