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「天冥の標ⅤI: 宿怨」Part1~3(小川 一水) [SF]

 この長大なシリーズもいよいよ展開が急になってきた印象がある。第6部「宿怨」とは、冥王斑という業病を抱え持った人々(救世群)の数百年にも渡る迫害・苦難の歴史によってもたらされたもので、これが激しく暴発する展開。3分冊という大部であり、間隔を空けて読まざるを得なかったので、1冊読むごとにメモを残しておいたものを結合して載せる。

天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)
天冥の標6 宿怨 PART 2 (ハヤカワ文庫JA)
天冥の標 6 宿怨 PART3 (ハヤカワ文庫JA)







Part1
 前半(第1章)の地球自然を再現したスペースコロニーでの《救世群》(冥王斑キャリアー)の少女の冒険は、大自然の中でのビルドゥングス・ロマン風だったのだが、その後は一転して《MHD》(マツダ・ヒューマノイド・デバイシズ)や《酸素いらず》、《恋人たち》が、入り乱れて合従連衡したり敵対したり、ドロテアという謎の巨大メカをめぐり争う、風雲急な展開となる。そこに飛来して潜入した異星人まで絡んできて、一方の情報生命体ノルルスカインとの銀河大宇宙を舞台にした闘争の一端がかいま見えてきた。
 いよいよスケールの大きなストーリーに収斂してきた感がある。

Part2
 ノルルスカインの接近を察知して立ち向かう昆虫型異星人の潜入先が選りに選って救世群のコロニーだった。数百年に渡るその経緯から語られる。壮大な宇宙規模の営み。
 そして太陽系人類世界の大変動、人類同士の宇宙戦争。この描写(宇宙空間での戦闘)は今までのスペース・オペラで見慣れたものより数段リアリティが高い。宇宙人の高度な技術を使っている点は少しご都合があるが。全人類を敵に回した大戦争が展開する。何とあっけなく数百万の人々が死ぬことか!そして破局的な結末(硬殻化した救世群の生殖能力喪失)による危機。続きはPart3と。

Part3
 (前巻から3ヶ月も間が空いてしまったので、記憶が薄れてしまった。こうなると、入り込むのに時間がかかる。)
 救世群の反乱の圧倒的成功から、人類史上最大の宇宙戦争へと至る。そこにからむ大宇宙規模の情報生命体の二大勢力の抗争。裏の裏にまた裏が、というどんでん返しの繰り返し。唖然とするばかりの展開。凄いとしか言い様がない。宇宙船の軌道上の動きなどの描写の科学的正確さは特筆ものか。シリーズ中の白眉、クライマックス。日本の現在のSFの最高峰、という賛辞も頷ける(それでもいわゆる〈ご都合〉的な要素は皆無ではないのだけれど)。今から読み始めるのには分量がハンパないので、お薦めしにくいのが難点。
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