SSブログ

「嵐のピクニック」(本谷 有希子) [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

店頭で見かけて面白そうだなと思って、読んでみた。短篇集。
 この作家のを読むのは初めてだが、自ら劇団を主宰する脚本家らしい。
 13篇の短編からなり、どれもこれも極めて異様で超現実的な奇想世界が描かれている(一部はリアルではあるが、異様さは変わらない)。SFではなく、ホラー・ファンタジーという括りに入るだろうが、脈絡の無さはもう悪夢のような世界だ。どれも短くて、狐につままれたような気分のうちにすぐに終わる。

嵐のピクニック

嵐のピクニック

  • 作者: 本谷 有希子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/06/29
  • メディア: 単行本




「アウトサイド」:やる気のない少女に優しいピアノ教師が見せた一瞬の狂気の行方。

「私は名前で呼んでる」:キャリアウーマンが会議室のカーテンの膨らみに妄想に囚われて発狂する。

「パプリカ次郎」:屋台の並ぶ市場を襲うスーツ男。意味がわからない。

「人間袋とじ」:足の小指と薬指がしもやけでくっついた部分を切開して、かつて入れた恋人の名前のタトゥーを剥き出す。

「哀しみのウェイトトレーニー」:冷たい夫。ボディビルにのめりこむ主婦の。意外なハッピーエンド。

「マゴッチギャオの夜、いつも通り」:動物園のサル山の猿たちとチンパンジーとのコミュニケーション。イタヅラで殺されたチンパンジーをよみがえらせる奇跡。

「亡霊病」:気味の悪い奇病を大衆の面前で発症する少女。その悲劇の分刻みの進行と心理の動き。

「タイフーン」:浮浪者が、傘で強風の空を飛ぶ。

「Q&A」:80歳を過ぎて現役の人生相談コラムニスト。最後の大特集でブラックかつ大爆笑な言いたい放題。

「彼女たち」:交際相手に突然決闘を申し入れる女達の大発生。変身して
男に襲いかかる。阿鼻叫喚。

「How to burden the girl」:父を母から奪って同棲し子供を生んだ女。襲い来る悪の集団。

「ダウンズ アンド アップス」:売れっ子デザイナーが悪戯心で若者を集めてサロンを作る、他人との関係の不安定さに右往左往する心理。

「いかにして私がピクニックシートを見るたび、くすりとしてしまうようになったか」:試着室に何時間もこもって姿を見せない客を応対する店員。夜を徹して試着し続け、全ての服を試した後、他店にまで試着室ごと移動。果たしてヒトなのか?

…などなど、どれをとっても〈わけがわからないよ!〉な作品ばかり。「居心地の悪い」思いになる。読後感は相当によろしくない。ただ妙にヘンな魅力のようなフワフワしてとらえどころのない、希薄な存在感が確固としてある(と言うのも矛盾した言い方だが)。読んだことも冗談だった、ということにしておこうか。お薦めはしないが、否定もしない。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。