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「屍者の帝国」(伊藤 計劃×円城 塔) [SF]

2012年度日本SF大賞特別賞、「SFが読みたい2013年版」第1位、第3回Twitter文学賞(国内)第2位、…と非常に評価の高い作品である。また、夭逝した伊藤計劃の残したプロローグを元に芥川賞作家の円城塔が書き継いだ、という話題性もあり、前から読もうと思っていたのだが、入手が遅れた。

屍者の帝国

屍者の帝国

  • 作者: 伊藤 計劃
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/08/24
  • メディア: 単行本


 内容・粗筋については、ネット上に沢山(例えばここ)あるので省略。

 率直に言って読みにくい。あの「円城塔」的なわかりにくさではなく、普通の文章表現のレベル(どっちの発言なのかわかりにくい、など)で。
 ネット上ではそういう評はあまり見ず絶賛の嵐なので、これは私の読書力の衰えかと、慄然たる思いがした。

 「歴史改変モノ」だが、有名な小説の登場人物がやたらと「総出演」する、いささかハメを外し過ぎの感がある。よく映画でやるヒーロー大集合(最近では「アヴェンジャーズ」とか)みたいな…。そう、この作品かなり「映画的」なのだ。そこにパロディ的な楽しさはあるし、派手なアクションシーンやスペクタクルが盛り沢山。けれど、エンターテインメントとして成功しているかというと、ちょっと首を傾げざるを得ない。

 展開がまだるっこしい。登場人物に何度も「わけがわからん」的なことを言わせるくらい説明がわかりにくい(作者も自覚してるのか?)し、大体、本来極めて複雑精妙な次元のストーリー内容で、入り組んでいる事この上ない。描写も詩的だが明解ではない。
 それが二転三転していき、最後には何が真相だったのかが明示されないで中途半端に終わっている(「余韻」を残しているとも、読者の解釈に任せているとも読めるが)。

 最初は実写映像(つまりリアリティがある)だった脳内イメージがだんだんアニメになってしまった(つまり、ものが浮いたり光ったりというご都合なシーンの頻出)。ということは、これは「ラノベ」的だということではないかっ!(そういう要素もあるという意見もあった)

 後半で“”や“言葉”、“進化”がキーワードになり、なおかつ聖書的神学的世界への言及のあるアイディアはそれなりに面白かった。これは円城氏の要素なのか?
 長すぎるエピローグの最後の部分はメタ的になっており、語り手を務めた作者自身の投影なのだろう。

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