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「霊的探訪 スピリチュアル・レッスン」(辛酸 なめ子) [ノンフィクション]

辛酸なめ子という名前はよく目にしていたが、読むのは初めて。漫画家/コラムニスト。その名前からは雨宮処凛みたいなロスジェネ世代で貧困に苦しんだ過去を持つ女性かと思いきや、全然そんなことはないではないか。随分ふざけた筆名だ。
 何しろ、ここに描かれているスピリチュアル趣味に投じたお金の額は、軽く(旅費含めて)数百万円になると思われ、生活に余裕のある人でないと成し得ない、贅沢な趣味であるのだ。

霊的探訪    スピリチュアル・レッスン

霊的探訪 スピリチュアル・レッスン

  • 作者: 辛酸 なめ子
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/10/10
  • メディア: 単行本


 ところで、なんでこんな本を読んだ(正確には「読もうとした」)かと言うと、〈世の中には珍なるものがござるな〉という下世話な興味である。
 私は霊魂の存在は信じないが、いわゆる「霊感」という現象が広く存在することは事実として認めざるを得ない。勿論私にはそんな感覚は全くないのだが、霊感があると称する人は多数存在し、しかもその経験には一種の共通性、客観性とでも言うべき面があり、恣意的とばかりは言い切れないような印象があるのだ。つまり、例えば特定の場所いわゆるパワースポットで複数の証人が一致して「霊気を感じる」と述べたりするような(伊勢神宮は凄いらしい。行ったことないが)…これは一体どういうことか?と。いまだ科学的な説明はなされていない。と言うよりも「科学」の対象外とされているだろう(一部で科学的研究の対象としている向きもあるようではあるが)。
 彼らの霊感体験は、おそらく内心(不安、恐怖、妄想、錯覚、動揺、体調など)と外的要因(気温、風、匂い、色、音、風景)とが相俟って生じた脳内現象であろうと思われ、そういう反射回路が形成されている人に共通して起こる現象なのだろう、くらいの推測しか出来ない。

 さて、この本だが、実にたくさんの霊的体験を求めて精力的に、いや偏執狂的に動き回っている。いろんなイベントや講演会やパワースポットに参加し、訪れ、話を聞き、実技練習を行い、夥しいアイテムを入手する。珍妙な奇人変人の〈権威〉が次々登場する。そのどれにも概ね感服しているのである。
 だが、1/3くらいまで読んでもう同工異曲でウンザリしてしまい、あとはチラ読みで終わらせてしまった。きりがないわ。
 著者のスピリチュアル志向はかなり〈マジ〉である。趣味の域を超えている。しかし、動機はいまいち不純で、現世利益的志向が強い。いや金銭とか恋愛運とかもろに現世的なものにかぎらず、来世的なものにしてもどうも「いい目を見たい」的な欲望が隠し切れないのが、まぁ可愛いといえば可愛い。そういうのはかえって悪い気を招くよ、とか言われて反省したりもするのだが、「ステージ」としては随分低いのではないかい?と思わされる。要は煩悩の塊みたいな人なのだ。
 それにしても、これだけ次から次へと渡り歩いて探求するのはいいけれど、相互の矛盾、論理的不整合については無頓着なのである。その場その場の理屈に感心し平伏するばかり。全く無邪気なお人である。(「おめでたい人」とも言う。)一切を飲み込む度量の広さというべきか、いい加減な無定見と言うべきか。〈マジ〉と言ったが、やっぱり適当な趣味のレベルに過ぎない様な…。「スピリチュアルコレクター」と言うべきかも。こういう趣味は女性のほうが多いらしい。同好の士同士で盛り上がるようだ。まぁ男同士でこんなふうに盛り上がってたら気持ちが悪いわな。
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