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「楽園のカンヴァス」(原田 マハ) [小説]

「日曜画家」アンリ・ルソーの生涯とその残した絵の謎を追究する物語。面白い!

楽園のカンヴァス

楽園のカンヴァス

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/01/20
  • メディア: ハードカバー



 12月22日に放送されたTBS系テレビ番組「王様のブランチ」で「ブランチBOOKアワード 2012」を受賞している。第25回(2012年)山本周五郎賞も受賞。本屋大賞にもノミネート。そのせいか非常に人気が高くて、図書館に予約して半年以上待たされた。

 素朴で素人っぽい作風で、登場時には酷評・嘲笑されたというルソーの作品が近年(?)再評価されて広く知られるようになった、その経緯は詳しく知らない。特に魅力を感じる画家でもなかった。まぁ、こういうのもユニークでそれなりに面白い絵だよな、程度。それが20世紀初頭のフランスでの美術界の運動に、ピカソを通じて大きな影響を与えた、とは知らなかった。そういう美術史上の動きとは無縁の孤立した、孤高の存在のように思っていたのだ。

 それにしても、いやはやなんと込み入った構造をした小説だろう。3つの隔絶した時代と場所がそれぞれに語られる。2000年の倉敷、1983年のニューヨークとバーゼル、そして1900年代のパリ。特にこのパリ時代のルソーとミューズたるモデルの女性ヤドヴィガの物語の組み込み方がすばらしい。
 それらが密接な関係を持って、過去が鮮やかに蘇る。中心となる絵は表紙にもなっている『夢』。そこに立ち現れる絵画への情熱、永遠への憧憬の描写。その仕掛けは見事としか言いようがない。この美術に深く関わった作者にしか書けない小説だろう。
 推理サスペンスの趣もある。謀略の匂いも漂うし、どんでん返しが何度も起こる。エキサイティングだ。

 絵画をテーマにした小説は少なくないだろうが、あまり読んでいないので比較できない(細野不二彦の「ギャラリーフェイク」が一番先に頭に浮かんだりするが)。それにしても出色の出来ではなかろうか。史実とフィクションを巧みに混ぜ合わせていて、その境界がはっきりとはわからないのは門外漢だからで、詳しい人なら「ここからは創作」という線は明確なんだろうけれども。
 お薦めです。
タグ:絵画
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