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「ウェブで政治を動かす!」(津田 大介) [ノンフィクション]

 図書館を頻繁に利用(常に予約上限数の20冊を目いっぱい予約)していると、返却期限があるので買った本よりも優先して読まざるを得ない、そのため、〈買ってでも読みたい本〉が〈借りて読めばいい本〉よりも後回しになるというアホみたいな逆転現象が常態化しているのだが、この本は「なま物なので早く読んだほうがいい」的な話を著者自身がツイートしてたので、買ってすぐに読んだ。「Twitter社会論」に続いて読むのは2冊目。(これらの間に出た「情報の呼吸法」と「動員の革命」は買ったまま積ん読状態。ついでに津田メルマガも量の多さになかなか読み切れていない)

ウェブで政治を動かす! (朝日新書)

ウェブで政治を動かす! (朝日新書)

  • 作者: 津田大介
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/11/13
  • メディア: 新書



 確かにタイムリーだし、ネットと政治の今現在を切り取った本なので、今すぐ読むべきではあるが、この本は「読み捨て」されるようなものではなく、鮮度はいずれ落ちるにしても、ネットの歴史の中で政治的なものの占める重要な局面を記録したドキュメントとして、後世に重要な資料として残り、良く参照される本になるのではないか?

 大体、最近の「新書」の類は、2,3時間ダダーっと喋った録音をテープ起こしして少し体裁を整えただけみたいな、スカスカの中身の薄いものがやたらと多い印象があるのだが、新書にしては厚めのこの本は3年以上に渡る著者の見聞及び行動を凝集している点で中身が濃い。よく整理されている。また語り口が非常に平明で読みやすいのもいつもながらの特徴だ。中学生でもすいすい読めるだろう。

 「Twitter社会論」でも、入門的な部分よりも政治における活用についての章が著者の「一番力を入れた」ところだったと言っていたが、今度の本はまさにそれが主題。データが豊富であり、登場する政治家をはじめとする人物の数とコメントも多い。

 2009年7月にTwitterを始めた初日から@tsuda氏をフォローしていたこともあり、出てくるトピックは殆どが(数々の炎上案件も含め)既知の話だった。「ありましたねー、それ!」という一種の懐かしさと、この3年間の濃密な展開の記憶が想い起こされた。

 多くの政治における事例を網羅していて、趨勢としてネット活用が今後進んでいく傾向は示されたと言える。但し、方向だけで具体性はいまいち欠ける感はある。
 楽観的なスタンスが基調だが、手放しで礼賛しているわけでなく、問題点も無視していないところが単なるアジテーションではなく冷静さを感じさせる。アーサー・C・クラークの「私は51%の楽観主義者」という言葉を思い出した。
 著者が準備しているという、政局でなく政策の情報をよりオープン化する〈政治メディア〉は一つの解法なのだろう。

◆ ◆

 今気になるのは、今度の総選挙で自民党が第一党に返り咲き安倍極右トンデモ政権が誕生しそうなこと。それもマスコミの支援ばかりかネットの力を借りて。
 安倍は野田総理から提案された党首討論の場を「TVでなくニコ生でやりたい」と言ったそうなのだが、この本の中で(事業仕分けの中継などで、一般意志2.0の具現化として)肯定的に評価されているあのニコ生である。
 安倍はネトウヨたちの応援コメント弾幕が得られそうなあそここそ「ホーム」と思っているのではないか?片山さつきの言動でも感じたが、ネトウヨというラウドマイノリティを「ネット世論」と勘違いしてそれにおもねる、と言うより「我が意を得たり」とばかり増長する、というおぞましい現象が起こっているのではないか?
 「Web2.0」が「バカと暇人のもの」となってしまった(?)のと同じく、これからの日本におけるネットと政治の関係は平坦なものとはなり難いのではないか?

 などと他人事みたいに「冷静でシニカルな俺アピール」してる場合ではないのだが。

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