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「マンガのあなた SFのわたし 萩尾望都・対談集1970年代編」 [サブカルチャー]

萩尾望都の漫画は当然ながら好きである。女性漫画家のなかでは最も多く読んだ。「少女漫画」じゃない普遍性を持っている作家。キーワードは、やはり“SF”だろう。
 「ポーの一族」を大学の漫研時代に、そこに出入りしてた年上のお茶の水女子大生から勧められて読んだのが最初。「11月のギムナジュウム」「トーマの心臓」「11人いる!」「百億の昼と千億の夜」「スター・レッド」、かなり間を置いて「バルバラ異界」…他に沢山の短編も。他に読んだ女性漫画家と言ったら、大島弓子、山岸凉子、高橋留美子、美内すずえ、矢代まさこ、樹村みのり、くらいしかない。(って、この年の男にしては結構多いのか?)

マンガのあなた SFのわたし 萩尾望都・対談集 1970年代編

マンガのあなた SFのわたし 萩尾望都・対談集 1970年代編

  • 作者: 萩尾 望都
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/02/21
  • メディア: 単行本


 この対談集は1977年前後にいろいろな雑誌上で行われた、錚々たる相手との対談を再録したものであるが、今読んでも十分面白い。つまり古びていない。

1)手塚治虫「別冊新評」
 当たり前かもしれないが、手塚がSFをたくさん読んでるのが今更よくわかった。萩尾氏も同様だけど。私にとってもSF体験における同世代感が強い。ツーカーで通じる人は少ないからね。(と言っても彼らの読書量には負けるが。)
 萩尾氏は初めてのためか緊張のあまりろくに喋れなかったと述懐しているが、確かに〈間投詞〉多用な発言が目立つ。何しろ相手は神様!やはり対等な対談ではない。手塚氏はフランクにまた彼女をリスペクトもしつつ話してるのだが。
 SF、SF漫画に対する作家の男女別(ジェンダー)の違いの話、エロティシズムの話が面白い。

2)水野英子「月刊mimi」
似た者同士のガールズトークと言う感じ。
同じ魔女の同業者仲間である。

3)石森章太郎「月刊マンガ少年」
SF好き仲間で盛り上がり。手塚氏とのときよりリラックスしている。

4)美内すずえ「ガラスの仮面フェスティバル」
互いに対照的なところに惹かれあってるかな?
不思議大好きなところは似ている。同業者の悩みの共有・共感がある。

5)寺山修司「モンブラン」
寺山がどうでもいいような些細なことで質問攻めをし、ほとんど一方的に彼が聞いている。

6)小松左京「クエスト」
意外にもSF話はあまりしていない。
小松左京の守備範囲が広すぎて、ありとあらゆる話題が展開する。流石である。

7)手塚治虫・松本零士「月刊リリカ・増刊号」
前回の手塚対談から1年くらい後。鼎談なので話が弾んでいる。まさに談論風発。メシスタント、闇鍋、食べることの重要さ、ペンネームの意義、猫の影響、新人論、異性の描き方の違い、デビュー当時の思い出…などなど。盛り上がっている。

8)羽海野チカ(語り下ろし)司会・ヤマダトモコ
これだけ現在の対談。羽海野が私淑し影響受けまくりの大先輩との、興奮した、また肝胆相照らす会話が展開。影響が手塚→萩尾→羽海野と連綿と連鎖する。表現技法(霧、影、顔など)への先輩作家の影響と獲得過程。互いに相手の作品のディテールやセリフに踏み込んでの検証。話が深い。

 話の内容・文脈に沿って、オリジナル漫画のシーンや表紙の図版が豊富に載って解説が加えられているのが良い。直接の言及がなくても、話題に関連した参考例の原画を的確に載せているので、背景が解りやすい。つまり構成がしっかりしているのでとても解りやすいのだ。ただのテキストだけでは漫画を語るのは困難なのでとてもいい編集だ。読んでて楽しかった。
タグ:SF 漫画
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