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「神は数学者か?: 万能な数学について」(マリオ リヴィオ) [サイエンス]

 数学の発展史を辿り、森羅万象の中に働く物理法則解明に数学が果たしてきた役割、そのあまりの成功ぶり=【数学の不条理な有効性】、意図しなかった分野にめざましい応用が出来る=【受動的な側面】などについて、偉大な数学者たちの業績を詳述している。まるで、神は数学を使ってこの世界を創造したかのような徹底した成功ぶりの話だ。

神は数学者か?: 万能な数学について

神は数学者か?: 万能な数学について

  • 作者: マリオ リヴィオ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/10/21
  • メディア: 単行本


 この本に通底しているのは「数学は発見か発明か?」という問題意識。「発見」は、数学的真理は人類とは関係なく以前から存在してきたというプラトン(イデア)主義的な見方であるのに対して、「発明」は人間の脳が創りだしたものにすぎない、という見方である。
 非ユークリッド幾何学の登場が唯一絶対の体系をつき崩して、プラトン派に打撃を与えた、という話が白眉。(しかし、これも人間の思考のバリエーションであって、本体たる数学的真理はより大きなものとして厳然としてある、とは思う)

 私は小学生の頃、算数・数学という積み上げ式の教科に接し、学年を追うごとに難しく高度になっていくことから、その先の中学、高校、大学へとその道がつながっており、さらには現代数学の最高峰の限界にまで至るのだろうが、それでもまだ未知の先があるのではないか?と思ったことを思い出す。つまりこれはプラトン的な世界を垣間見たということだろう。
 この本を読んでもその感覚は変わらない。

 著者は発見とも発明とも断じず、両方の側面を持っていると言う。確かに生身のヒトの営みである以上、その生物的制約(例えば眼が二つしか無い)による影響を受けたり、脳そのものの思考メカニズムが持つ特性もあり、不完全な(と言うより個性的な形の)ものになるという一種の「生理」はあるのだろうから、完璧なものとは言えず、常に未完の「発明」品の要素はあると思う。
 非常に面白く明解でエキサイティングな本だった。
タグ:数学
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