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「恋の罪」 [映画]

 園子温(その・しおん)監督の映画「恋の罪」をテアトル新宿で観た。このハコは以前2月に同監督の「冷たい熱帯魚」を見て以来。文芸系のマイナーな映画をよくやっているようだ。今後の上映スケジュールを見ても結構そそられる小品が多い。(そういうマイナーなのは結局殆ど見ないんだけどもね)

 いや、しかしこの作品、見終わって、なんだかなー、としっくり来なかった。女優陣の体当たり演技は凄いのだけれど、何というか、展開が無理すぎの(つまりはご都合主義)感があり、ストーリーにリアルさが無いのだ。人物造形が突飛すぎると言うか。悪夢を見てるような不条理さである。「冷たい熱帯魚」ほどグロくはないけれど、やはり相当にグロい。猟奇的に念の入った死体損壊の必然性が分からない。セックスシーンは多いが、その描写も荒々しくてすさんだ印象が強い。エロと言うよりバイオレンスだ。
 平日昼間だったので例によってシニア料金観客(殆ど男)が多かったのだが、見終わって出る人たちも「いい映画を観た充実感による興奮」的な雰囲気は感じられず、戸惑いの中黙々として退出していたような印象があった。私の隣の席は途中で空席になっていた。女性なら別の感想を持つのかもしれない。「これこそ女の赤裸々な心理だ!」とか?

 ところが、cocoなどネットで見ると大絶賛の嵐である。(ま、少しは否定意見もあるっちゃあるけど)これには違和感がある。まぁ映画評に限らず、レビューを書くモチベーションは「良かった」と思った人の方が高く、否定的な人はそもそもスルーするのが当然なので(例外はネガティブdisり根性の横溢する〈2ちゃんねる〉だろうけど)、概ねネット上では賞賛意見のほうが多くなるの法則、というのはあるだろう。

 Twitterでフリージャーナリストの烏賀陽弘道(@hirougaya)氏が連投でレビューしていた。抜粋すると、

>お勧めしません。
→確かに。友人に勧めるかというと…。

>よくこんな異物感満載の映画が大規模公開されたものだと、それだけでも奇跡。しかしそれ以上でもそれ以下でもない。
→「大規模公開」なのかなぁ? 園監督、注目度高いのは事実でしょうね。

>見るのがしんどかった。主人公を3人にしたという設定がそもそも間違い
→水野美紀の女刑事は全く不要だと思いますね。

>全体的な統一感がなく、引用が引用に終わっている。パクリと誤解されるかもしれない。
→映画通でない私は、どこが既有名作品の「引用」だったのか、ひとっつも分からなかった。orz

>「女の視点でみた東電OL事件を描きたかった」にしては、まったく男の視点だったので空振り感
→ここはそうでもないんじゃないか?と。一応視点は女になってはいる。それを男が作れると思ったのが論理的におかしいのでは?と。

>演劇好き、文芸好き、芸術好き(あるいは自分でそう思っている人)にはいい映画 >商業映画としての価値基準でみるのがそもそも間違い。芸術作品として自分の美意識に忠実に作ったのだろう。
→絶賛してる人はおのれの「芸術映画好き」を表明したいからじゃないのかしら、などと思ってしまう。「高度に過激な絵を脈絡なく並べると『芸術』と見分けがつかない」というクラーク的な法則もありそうだし…。

 とは言え、まだ本当に映画を深く観る〈達人〉の類の人の評を読んでいないので、私のは表層的な観方にすぎない、ということもあり得る。「へぇえ〜〜、そういうことだったのか!!」という目ウロコの評があれば読んでみたい。自分では気づいていない謎が(もしかしてあるとして)解けるかもしれない。
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