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「天冥の標 IV 機械じかけの子息たち」(小川 一水) [SF]

やっと最新刊に追いついた。それにしても、なんじゃこりゃああ〜〜!殆どポルノ小説ではないか!まぁ、SFだからって、セックスを対象にしちゃいけないなんてことはなくて、非常に重要なテーマであるし、以前からSSF(セックスSF)はいくらもあったわけだが。性の探求のツールとしてSFがどれくらい有効なのか、という問いがあるとして、この作品がそれに十全に応えているとは言いがたい。

天冥の標Ⅳ: 機械じかけの子息たち (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標Ⅳ: 機械じかけの子息たち (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小川 一水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/05/20
  • メディア: 文庫

 シリーズ4巻目だが、前作を読んでから1年近く経っているので、「年表」的な知識がすっ飛んでいて、大きな流れの中でこの作品がどの位置を占めるのか、わからないままに読み進めたのだが、どうやら時代は第3巻(アウレーリア一統)より後、第1巻(メニーメニー・シープ)より前、となるようだ。当然登場人物は全く重ならないが、世界構成の主な要素(救世群と酸素いらずとラヴァーズ)は存在している。
 今回はそのラヴァーズが描かれる。第1巻で出て来ていささか奇矯な印象を与えた、このセックス用アンドロイド集団の発祥から発展の過程が明かされる。救世群の少年が、ラヴァーズのスペースコロニー《ハニカム》に連れてこられて、性の冒険、《混爾(マージ)》と呼ばれる究極の性交の境地を求めて探求の道へ邁進するという、イヤハヤナントモな展開である。濃厚な性描写が延々と続く(よいこの皆は読んではいけません)。
 セックス用アンドロイドというテーマは男にとって(いや女にとってもか?)魅力的な「そそられる」概念ではある。しかし、そういうのを読めば読むほど無理がある絵空事感が増す。
 この手のSFで出来の良かったのは、石川英輔の「プロジェクトO」で描かれた理想的なセックスアンドロイド“オイロット”開発譚で、あれは(ハード、ソフト含む)技術レベルでの苦闘を描くという面白さに限定されていて(それはそれで見事ではあった)、所詮は超高性能ダッチワイフにしかすぎなかった。
 それに対し、この作品では、生身の人間でさえ極めて困難な(ほとんど仏教の「解脱」に匹敵するんじゃあるまいか?)マージなる境地に、人造人間が挑んでいるのだが、勝算があるとは思えない。と言うより、「それはヒトではありませんから」で終わりそうな話ではある。相変わらず「ご都合的」道具立てが多くて、いささか鼻白んだ。

 で、あれやこれやの騒動があって一時代が画されるという結末になり、この壮大な宇宙史シリーズの一翼を構成することになるのであった。う〜む。
 もうすぐ第5巻「天冥の標V: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河」が出そうなので、ここまで読んできたからには、まぁもう少しつきあってみようか。
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コメント 2

ask

ご本人による次巻発売告知。
https://twitter.com/#!/ogawaissui/status/137908414427832320
by ask (2011-11-20 00:13) 

ask

「SFマガジン」1月号、小川一水特集、を買ってきた。「《天冥の標》用語集」が有難い。
by ask (2011-11-25 20:01) 

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