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「ねじまき少女」(パオロ・バチガルピ) [SF]

 主要各賞総なめで、今SF界大注目の作品。遅れてはならじ、と買って読んでみた。
 しかし、読みにくい! 訳が悪いのか(恐らく訳者も、わからず逐語訳してる部分が相当あると見た。読める人は原書で読んだほうがいいだろう)、各文を一度読んでも頭に入ってこず、何度も視線を戻して読み直すハメに再三陥った。外国人名や動植物名、企業名などの固有名詞がややこしくて、背景、関係性や事情が掴みにくいからか、特に政治的あるいは商売的な駆け引きの会話などの微妙なニュアンスが理解できない。何度も途中で放り出しそうになった。

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)
ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)
 ところが、書評アルファブロガーの小飼弾氏などは「読みやすい」と言っている!信じられない!さすがは手練の読み手、私なんぞ足元にも及ばないということか? 他の書評も何件かググッてみたが、「読みにくい」というのにはついぞお目にかからなかった。これは私の読書力が落ちていることを示しているのか?いや実際、最近スピードも根気も目に見えて落ちてきているのは実感してはいるのだが。
 ただ、自慰的なことを言うと、ネットに上げられている感想は実は(売れ行きに比して)どうも異様に少ないのではないか(amazonのレビューも発売後二週間経つのに僅か4件しかない)と思えるのだ。それはつまり〈途中で投げ出した〉人や、〈感想を書くのに苦慮している〉人が多いのではないか?と。出てる書評は大体絶賛するものばかり(あるいは内容紹介のみ)で、いかにも不自然。これも本国で評価が高いので褒めておいた方が無難だ、みたいな、内容に深く踏み込んでいないレビューが目立つような…。まぁ下衆の勘ぐりだろうが。

 ともあれ私の感想は、内容を半分しか読み取れなかった者のそれにしか過ぎないという情けないものにならざるを得ないわけだが、それでもなおこの作品はなかなかのものだろう、とは言える。
 世界構築が相当念入りであり、なおかつ展開がスリリングだ。環境、エネルギー、技術、経済、政治軍事などの要素を総合的に配慮して創り上げた未来世界(つまりセカイ系みたいな中二だましではない)で、現代とは様相が一変しておりかなり極端な設定なわけだが、リアリティはある。いや、リアリティと言うと少し違う。こんな世界は突飛すぎて無理目である。仔細に見れば突込みどころはたくさんありそうだ。アメリカ人の視点での歪んだオリエンタリズムも鼻につくし(ゲイシャガールがニンジャになるところなんか、もうね^^;)。リアルさではなく疾走感のあるストーリー構築と描写力、といったところだろう。
 「ニューロマンサー」以来の衝撃、と言われるが、アレも読みにくかった。私はサイバーパンクは好まないのだが、この作品もあれと似た荒涼とした雰囲気がある。やはり私の嗜好にはちょっと合わない。が、まぁ今後の影響力もありそうだし、一応読んでおくべき作品ではあるだろう。
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コメント 1

ask

Twitterで翻訳の問題点を指摘しているツイートがtogetterにまとめられています。
http://togetter.com/li/140266
誤訳がたくさんありそうです。読みにくいわけだ。
ってか、そもそも相当翻訳困難な作品だったのでは?
by ask (2011-06-06 00:46) 

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