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「ぼくは猟師になった」(千松 信也) [ノンフィクション]

これも数年前に評判になった本だ。まずは物珍しさが先に立つ。
 著者が選んだのは、猟と言っても鉄砲によるものではなく、ワナ猟である。あまり華々しい感じはしない。都会で、大学生活をおくった後で、猟師になる道を選ぶなんて!随分変わった人だなぁ、と。
ぼくは猟師になった

ぼくは猟師になった

  • 作者: 千松 信也
  • 出版社/メーカー: リトル・モア
  • 発売日: 2008/09/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

今時の若者がこんな人生を選ぶなんて、なかなか無いことじゃないか?とも。
 しかし、内容の面白さに引き込まれる。猟という仕事、そのディテールがとてつもなく面白い。何事につけ、プロの話というのは面白いものだが、このワナ猟という世界にも、実に多くの技術、工夫、心得、考え方があって「奥が深い」のだった。

 しかも、語り口が抜群に良い。極めて明解かつ興味深く、文章がこなれていて読みやすく面白い。共感をそそるし、臨場感もある。なんとも素晴らしい本だ。
 子供時代から説き起こし、必然とも言えるような出会いや助けもあって、猟の世界に踏み入れ、環境を整え、徐々にさまざま経験を積み、誠実な態度で動物や仲間に向き合い、捕獲方法から解体、料理の仕方まで、多様な技術を会得して行く様子は、ビルドゥングスロマンに近い雰囲気すら醸し出している。自然の恵みに謙虚に感謝し、「食べる」ことで生命に対する尊敬と感謝の念を確認する、というあり方は、現代人が安易に大量飼育され商品化された肉を貪るのとまるで違うだろう。なんとも羨ましい生き方のように思えてくる。口蹄疫が猖獗を極めているこの時期だけに余計に考えさせられた。
 お薦めの一冊だ。
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コメント 4

duznamak

 僕の先生もこの本のファンなんだそうで、非常に面白いとおっしゃっておりました。それで興味は抱いていたのですが、購入するのが面倒になり、結局そのまま読まずじまい。でも、この記事にアマゾンのリンクが貼ってあったため、ようやく購入する決心がつきました。askさんのせいで、とんだ散財です。
 読み終わったら、また報告しますね。
by duznamak (2010-05-13 23:01) 

ask

散財させて申し訳ないです。私は図書館で借りて読んだんですが。
その先生、著者の恩師かなんかですか?
by ask (2010-05-14 09:48) 

duznamak

僕は、本は手許に置いとかないと気が済まないもので。

件の先生は著者と直接関係があるわけではないようです。ただ、ご本人が登山を趣味としていることもあり、何かと共感を感じるとか何とか。
by duznamak (2010-05-14 22:56) 

ask

この著者の友人という方からTwitterで話しかけられ、本人はTwitterしてないのか訊いたところ、やってないようで、
>これからの時代彼の生き方はもっと発信していく役割があると思うので、会ったら勧めてみます。
とのことでした。
by ask (2010-05-15 23:38) 

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