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「時間封鎖」(ロバート・チャールズ・ウィルスン) [SF]


時間封鎖 上 (1) (創元SF文庫 ウ 9-3)時間封鎖 上 (創元SF文庫 ウ 9-3)


時間封鎖 下 (3) (創元SF文庫 ウ 9-4)時間封鎖 下 (創元SF文庫 ウ 9-4)

 2006年ヒューゴー賞長編部門受賞作。
 ある日突然、全ての星が消える。地球は特殊な「膜」に覆われてしまったのだ。やがて時間の経過速度が外界の1億分の1になってしまったことが判明する。地球の1年の間に、宇宙では1億年が経つ。地球は何者かによって時間封鎖されてしまったのだ…という、とてつもない設定で始まる。その実行者、理由、メカニズムなど一切不明。理不尽だが、これもひとつの〈設定の勝利〉パターンかもしれない。星は消えるが、ニセモノの太陽が現れ、地上にはさしたる変化は起こらない、というのも相当ご都合的ではあるが。
 この小説はマクロとミクロの二つの展開がある。方や宇宙レベルの壮大なストーリー、方や恋愛や友情という生身の人間レベルの話。SFには珍しく、後者のウェイトがかなり大きい。要するに「純文学」的(なんて言葉は死語か)と言うか普通小説的な部分が相当強い。とは言え、こういう極端な状況下に置かれての心理という特殊なケーススタディになってもいるので、ただの〈惚れたはれた〉ではなく、破滅に瀕しての宗教的要素もたっぷり描かれて興味深い。
 さて、外界(太陽を含む)の1億倍で時間が遅くなるため、地球上での数十年で数十億年が過ぎ、太陽は赤色巨星化して地球は飲み込まれてしまうのは必至、となり、人類の最期は近いということになる。それを回避しようと、巨星化しつつある太陽の影響で温かくなって来ている火星のテラフォーミング計画が実行される。そもそもテラフォーミングには膨大な時間がかかる筈のものだが、このSFの設定はそれには打ってつけの絶妙のシチュエーションだ。数ヶ月で(つまり数千万年単位で)変化が進むので、そのタイミングで段階的に送り込む生物の種類を変えて行く、という手法だ。やがて、人間が住める環境になり、移住者が送り込まれ、あっという間に現地での10万年が経過し、文明は興亡し、やがて地球に一人の「火星人」がやって来る。彼がもたらすバイオ技術の驚異……。
 と、まだまだ話は終わらず、壮大な幕切れへとなだれ込んで行く。仮定体(地球を封鎖した生物)の謎も解明される。勿論ネタばれは厳禁なので書けないが、さすがヒューゴー賞受賞作、とても面白かった、と保証できる。おすすめ。

タグ:地球
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