SSブログ

第二水準漢字と私(その1) [言葉]

サブタイトル「askの異常な愛情、またはいかにして私は〈第二水準のask〉となったか」

 ひとくさり昔話をしたい。
 1985年は「パソコン通信元年」だった。確か、電話回線の自由化が行われ、モデムなどを接続することが可能になったため、と記憶する。その頃はまだパソコンは一般には普及しておらず、NECのPC-9801という16bitパソコンが「ふつー」だった(「国民機」とまで言われたくらいだ)。私は1979年にPC-8001が出た時にすぐに買い、その後98無印、9801F2と買い替えた頃だった。
 趣味でパソコンをいじるというのは当時珍しい部類だったろう。しかし、それまで大企業の一室に鎮座し、あるいはSFの中でしかお目にかかれなかったコンピュータを、個人で所有し自由に使えるということの面白さ興奮は大変なものだった。とは言え、スタンドアローンのパソコン(特に最初の8bitパソコン、Z80の4MHz、メモリ32KB、外部記憶装置はカセットテープ1200bps)に出来ることは限られている。原始的なキャラクタベースのゲームや、BASICでのプログラミングの真似事をして、思い通りに動いた時の喜びは忘れ難い。毎晩遅くまでいじり回して過ごし、言わば「淫する」状態になった私は、結婚も昇進もおろそかになり、今から思えば【人生を誤った】ということになるかも知れない。

 これは言わば〈おもちゃ〉だったが、9801を買うと、〈文房具〉へと進化した。漢字を扱えるようになったからである。当初は16進数でのコード入力しか無かったので極めて使いにくかったのだが、ワープロソフトの出現によって環境は一変した。かな漢字変換によって容易に文章入力作成が出来るようになったのは劇的な変化であり、パソコンの使用形態が根本的に変わってしまった。
 元々悪筆であった私は、キー入力で簡単に面倒な漢字がすいすい入力出来る容易さ(と綺麗なプリントアウト)に有頂天になり、毎日読書感想文や身辺雑記を入力しまくることになったのである。(ちなみに自分の字の美しさに自信のある人はワープロに習熟するのに遅れをとる、という現象が当時見られた。)
 ともあれ、こうして私はパソコン自体を使うことから、パソコンを手段として使って何をするか(書くか)に重心を移した、と言える。これはパソコンなんて「ただの」道具に過ぎない一般の人にとっては当たり前のことなのだが。その頃(MS-DOSの普及期)にはプログラムを自作することは殆ど無くなり、餅は餅屋、プロが作った高機能な製品ソフトをユーザーの立場で使うことになった。(淫してた割にはスキルはまるで向上していなかったし)
 そんな風に、文書を作成していてすぐに直面したのが、
 出ない漢字がいっぱいある!
という事態だ。変換しようとしてもどうにもこうにも「そんな字は無い」のである。なんじゃこりゃ?と思ったら、それが第二水準漢字だったのだ。えーーーっ、なんでこんなよく使う字がはいってないのぉ!と憤慨することしきり。
 98無印には〈第二水準漢字ROM〉が標準では付いておらず、オプションだった。そこで私は大枚(2万円以上したと思う)はたいて即購入した。今では考えられない話である。ともかくこれで万全となり、さらに入力に励むことになった。ところが、職場での数少ない98ユーザー仲間にその話をしても面食らった反応しかされなかったのが印象に残っている。「そんな漢字なんて使わないよ。必要性を感じないね」と、いそいそ拡張ROMを入れて喜んでいる私を〈変人〉でも見るかのような目で見るのである。まぁ、私の事を「語彙が多い」と言ってくれる人も居るのだが、少なくとも彼らよりは幾分かは語彙が多かったのだろう。

 さて、通信にはとても興味があったので、早速アスキーネットというBBSの実験システムに加入し、アクティブに書き込みを始めた。そこで、それまで書き貯めていた文書ファイルのストックが活きることになったのである。SFのsig(Special Interest Group)にアップロードしたりした。

 (長くなったし、これ以下は当時のログを引っ張りだして引用したいので、続きはまた後日ということにします)
タグ:漢字
nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 2

コメント 4

アヨアン・イゴカー

当時のパソコンの普及状態が分かり興味深い記事です。
私が始めてパソコンを買ったのは1989年でした。エプソン製で、モデルは覚えていません。5インチの柔らかいフロッピーディスクでした。
by アヨアン・イゴカー (2008-06-22 19:33) 

ask

1989年のエプソン製と言ったら、98互換機ではありませんか!
知りあいが購入してたのをいじったことがあります。なんか懐かしい。
確かBIOSは独自だったので、クローンではなかったと思います。
ひらがなフォントが稚拙な印象がありましたねぇ。
by ask (2008-06-22 23:47) 

もちろん

なぜか、興奮する内容の記事とやりとりですね。私がPCを初めて購入したのは、たぶん1996~97年頃じゃなかったかなと思います。続きが読みたいです。
by もちろん (2008-06-24 23:44) 

ask

>続きが読みたいです。
もちろんさん、続きをアップしましたが、お読みいただけましたか?
やたら長くて恐縮ですが。
昔のログで、しかもその中でさらにそれ以前の昔話をしているという、屋上屋を重ねた昔話で、なんとも私も年をとったものです。
by ask (2008-06-25 07:51) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。