SSブログ

君子、数学に近寄らず [サイエンス]

 先ほどNHK総合で放送されたスペシャル番組「百年の難問はなぜ解けたか−数学者失踪の謎」(ポアンカレ予想の魔力に取りつかれた天才の悲劇)を非常に興味深く観た。
 番組中、その「証明」なるものの説明がなされたのだが、わかったようなわからないような、じゃなくて、さっぱりわからん!というのが正直なところだ。
 易しく言うと「宇宙を一周して来たロープをたぐり寄せられれば、宇宙は丸い」というのがポアンカレ予想だと言う。たぐり寄せられないなら、ドーナツ型などの、トポロジー的に球以外の形だ、と。なるほどそりゃそうだ、自明ではないか?とも思うが、そもそも「宇宙を一周」とはどういう経路を指して言うのか?ってのがわからない。宇宙が四次元球の表面だという私の理解ではたぐり寄せることは出来ない筈だが、ポアンカレ予想はあくまでも宇宙を三次元空間と見なしているのか?…などと基本的なところが分からない。
 大体天才的な数学者たちが何人も挫折した(あげくは精神を病んでしまったりしている)ような難解な問題を理解することは、自慢じゃないが高校の数学で挫折して、本来興味は理科系だったのに文系に転向せざるを得なかった私にとっては雲の上の世界だ。
 この、ついに解いたロシア人数学者グリゴリ・ペレリマンも、生来の明るい陽気な性格ががらっと変わり、世捨て人になってしまった、と言う。その研究の過程のすさまじい過酷さが番組の中で暗示される。そこにハマることからかろうじて逃れて生還した別の天才数学者の「私は諦めることが出来て助かった」というような述懐が対照的で印象に残る。
 他にも「無限」を追究した数学者たちが次々に精神に異常を来したりしているようだし、数学という世界は剣呑なものである、という印象がある。数学こそは、この世の学問の中で最も根源的な究極の知のあり方なのだろうと思うが、そこに関われなかった私は幸運だったと思うべきなのだろう。つまりはタイトルのような感慨である。但し、〈究極の知〉に迫れなかった凡人としての忸怩たる思いも勿論ある。

ここで、替え歌を一発。
「ポアンカレはとても強い
ダースベーダーは黒い
宇宙は丸い」


タグ:数学
nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 4

wd

まあ、たったあれだけの説明で理解してしまうほうがありえないことであって、あの番組を見てよくわかったと思いこんでしまう人は、むしろ、あっち側へいっちゃいかけている人でしょう。

ちなみに、あの番組の細部の誤りのついての記事が数学雑誌に載っていますので、あわせてどうぞ。

糸川銚:電視機械は数学者の夢を見るか NHK放送『数学者はキノコ狩りの夢を見る』を見て,数学セミナー(日本評論社)2008年2月号48〜51ページ
by wd (2008-02-18 00:08) 

ask

wdさん、いらっしゃいませ。
>あれだけの説明で理解してしまうほうがありえない
そう言っていただけると一安心です。
>誤りのついての記事が数学雑誌に
情報有り難うございます。
本屋で立ち読みしようか、と思いますが、まだ店頭にあるかなぁ?
by ask (2008-02-18 22:32) 

wd

残念ながら、店頭では3月号に入れ替わっているようです。
図書館とか、どうでしょう。
4ページのために980円払うのが惜しくなければ、バックナンバーを購入してあげてください。
by wd (2008-02-19 10:34) 

ask

wdさん、返事が遅れてごめんなさい。
>図書館とか、どうでしょう。
図書館へは久しく行ってないんですが、その理由は、
http://blog.so-net.ne.jp/ask0030/2006-10-01
に書いてあります。
でも久しぶりに行ってみようか、と思います。そこに置いてあるかどうかわからないけど、、って今はインターネットで調べられるか。
by ask (2008-02-23 09:01) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。