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テンキーを使って小説を書くな! [言葉]

 誤解を招かぬよう断っておくが、携帯電話のテンキーで小説を書くな、と言っているのではない。(…って、最近の「ケータイ小説」ってのはホントにケータイで入力してるわけじゃないよね?!ケータイで読めるってだけだよね?)以前ホイチョイ・プロダクションの「気まぐれコンセプト」で、ある女性新入社員が「自分に使い易いキーボードに変えていいですか?」と訊いてパソコンにケータイをつないで入力を始めるというシーンがあって、カルチャーショックを受けたことがあるが、そこまで極端な話ではない。

 随分と前だが、よしもとばななの小説を読んでいて気になったことがある。数字の表記についてだ。「キッチン」、「TSUGUMI」、「NP」など初期の作品しか読んでいないので、今もそうなのかはわからないまま書くのは些か軽率かも知れないが、別に彼女の個人攻撃をしようというのではなく、彼女の例は以下の一般的な話の単なるきっかけに過ぎない。
 彼女の作品を読んでいて、「これはワープロ(もしくはパソコン)を使って書いた文章だ」というのがありありと見て取れた。文章中にやたらにアラビア数字が多用されているのである。普通それは漢数字で書くでしょ、と言いたくなる不自然なケースが頻繁に目についたのだ。例えば「一人」と書くところを「1人」と書いている。縦書きで印刷されている小説の中でいかにも異様な印象を受けたのだった。私は〈これはキーボードのテンキーで書いているに違いない!〉と確信した。日本語表現として美しいとは思えなかった。基本的に縦書きの和文の中にアラビア数字は入れるべきではない、と思うのだ。
 以前にもこの問題を考えたことがあって、不自然な書き方として
「1期1会」「2者択1」「小泉純1郎」「坂上2郎」「3方1両損」「4面楚歌」「4分5裂」「5里霧中」「6波羅探題」「7変化」「7福神」「8方美人」「金毛9尾の狐」「必要10分」「10全」「10中8,9」「12単衣」「ゴルゴ13」「15夜」「16夜日記」「20歳のエチュード」「24の瞳」「椿30郎」「36計逃げるにしかず」「49日」「夏も近づく88夜」「99電機」「100科事典」「210日」「800屋」「大江戸808町」「1瀉1000里」「1000夜1夜物語」「1,000変10,000化」「10,000が1」「8,000,000の神」「1,000,000,000,000候(兆候)」
なんてのを考えて遊んだ憶えがある(ちなみにこの例の中におかしくないのが一つ入ってます)。勿論、人名や地名などの固有名詞や慣用句などに算用数字を使ってはならないのは当然なのだが、よしもとばななの書き方では、そんなトンデモ表記だってしかねない、と思わされたのだ。彼女は「1人」と入力したとき、どういうキータッチをしたのか?恐らく
【テンキーの“1”を押下→ローマ字で“nin”または“hito”と入力→変換】
ではないか?(いや“hitori”で「1人」と出るよう辞書登録しているのかも知れないけど…)
 こういうのってアリなんだろうか?どうも日本語の常道を踏み外しているんじゃないか?という気がしてならない。テンキーと日本語とは本来無縁なものの筈ではないか?

 一時期、小説家がワープロを使って書くことの是非、などという議論があったのだが、最近はとんと聞かない。時代の趨勢と言うべきか、最近の作家は殆どがワープロ(ソフト)を使っているのではないか、と思われる。それは〈作家という文章のプロ〉の選択であって、やれ文体が変わっちゃうんじゃないか、とか言葉の身体性が失われるんじゃないか、とか外野が文句を言っても始まらない。ではあっても、せめて日本語表現の節度は守るべきじゃなかろうか?

 最近の新聞を読んでいても縦書きなのにアラビア数字が沢山混じって来ている。私の挙げた極端な例はあまり無いが、それでもかなり近い危ない表現はよく見かける。今日の首相所信表明演説の中に「6者会合」なんてのが出て来るが、これなんかはかなり危ないんじゃないだろうか?(って入力者は新聞記者じゃなく、内閣の職員か。)


タグ:日本語
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