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時よ戻れ、お前は美しくなる! [サブカルチャー]

 他のサイトの話だが、またしても讀賣新聞の「発言小町」ネタである。「男性発」というカテゴリがあって(ってこたぁ、あそこってデフォルトは女性用なのか?! そう言えばやたらと嫁姑問題が多いような印象はあるが)、そこに「結婚を断られた相手からの求婚」というトピックが立った。

>5年前に職場の女性に結婚を申し込み、 答えはNO。
>彼女は職場を去り、その後没交渉。しかし最近彼女から「会いたい」と連絡あり、
>「今になって思えばアナタ以上に私の事を理解してくれる人はいなかった。出来ることならもう一度プロポーズして欲しい。今なら5年前とは違う返事ができる」「返事がもらえるまで待ってる」と言う。
>(職を転々とした彼女は現在無職で、働かない母親との二人暮らしで経済的に困窮の様子)
>自分はもう断ることは決めているが彼女の精神状態や近況を考えると出来るだけ傷つけないで伝えたい。「女性が納得できる断り方」というのはあるか?

…という、なかなかにユニークな相談だったので、沢山レスが付き盛り上がった(現在もまだ継続中)。
 一読して「なんて勝手な自分の都合本位な女だ」とは誰もが思うだろうが、トピ主の真意は〈いかにして上手く断れるか〉という事(How to)を訊きたい(以前恋愛がらみで自殺未遂を何度かやらかした女性なので、扱いに苦慮している)のに、レスの大半は、その元カノへの批判で占められていた。トピ主(←それにしてもヤな言葉だなぁ)さんは、そんなことは先刻承知というか、もう断る気持ちは固まっているのだから、そんな批判をしたって無意味なのに。
 私は単純に批判だけするのでなく、
>日本の少子化を憂う立場からは、
>「もっといい条件の人の出現を待ったけど、ダメなので、ここいらへんで次善の人で妥協するしかないかぁ」という決断は大いに奨励すべきなんですがね。

などと、岩波新書の「少子社会日本」を思い出しながら、つい軽い調子で書いてしまったのだが、
>総論はそうであっても各論となると、「是非結婚してあげて!」とは言いにくいですね。
と付け加えざるを得なかった。

 その後、事態は動いた。トピ主が、
>彼女の希望で5年前に私が彼女にプロポーズを断られた場所で会うことになりました。
と書き込んだのである。
 これにはびっくりで、私は早速、
>こりゃまたなんという舞台設定でしょう!
>つまり、彼女はその時点まで時間を巻き戻すことを念じている、ってことではないですか?!
>5年間の時間の経過をご破算にしてやり直したい、と。ま、最初からそう言ってたわけだから、さもありなん、ですが。そういう意図というか気持ちを分かってOKしたんですか? それはあなたの自信ですか?ならいいんだけど。
>「疲れを知らない子供のように、時が二人を追い越して行く。呼び戻すことが出来るなら、僕は何を惜しむだろう」という歌がありますが、「呼び戻すこと」は出来ないのです。神様でさえ時の経過の不可逆性の前には無力です。それを巻き戻そうたぁ、神をも恐れぬ所行ですぞ。

と大仰に書き、同様に大勢の人から「色よい返事を彼女に期待させるようなシチュエーションはやめるべき」というレスが沢山書かれた。
 その後、掲示板の動きは止まっている。「発言小町」の弱点は、書いてから掲示板に掲載されるまでのタイムラグが非常に長いことである。金曜日の夜書いたものが載るのは休み明けの月曜の午後だったりするのだ。これは内容の事前チェックのためで、2ちゃんねる化を阻止するためには必要悪ではあろうが、それにしても、このような喫緊の話題の場合、こんな長いタイムラグは極めて不都合だ。土日の間に二人は再会してる可能性が高いのに、またその間にいろんな人が意見を書いているのにそれが読めないということは、トンチンカンな無駄な書き込みをしてしまう可能性が非常に高くなる。
 私はそれを指摘するレスを書き、「せめてトピ主のレスだけはノーチェックで即座に掲載するようにしたら?」と提案したのだが、見事に検閲削除された。これは、運営がらみのメタな意見をユーザー風情がすることは許さん!という姿勢であって、「Yahoo!知恵袋」でも同じ目に遭って撤退した〈懲りない〉私は、「発言小町」からも撤退を考えている。(って滅多に書かないんだけど)
 ところで、この話に関連して思い出したのが、ずっと前に読んだ傑作

リプレイ (新潮文庫)

リプレイ (新潮文庫)

  • 作者: ケン・グリムウッド
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1990/07
  • メディア: 文庫
これである。 人生を何度もやり直す、というのはそれほど珍しい発想ではないが、何度も繰り返される人生のその都度の変化のディテールが素晴らしかったのを憶えている。未読の人には絶対のお勧めだ。
 で、今回の彼女の場合も、このリプレイをしようとしているのは明白だが、これは〈タイムマシンを使用しない歴史改変〉という大それた野望であり、タイムパトロール隊に逮捕されるのは必定の、明白な時間犯罪を構成する(まさに神をも恐れぬ所行)、と思うのだが、どうであろうか?
タグ:ネットの闇
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共通テーマ:恋愛・結婚

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コメント 4

duznamak

記事のタイトルが素敵です。

>何度も繰り返される人生のその都度の変化のディテールが素晴らしかった

 同じテーマの作品では、『リバース』って映画も面白かったです。ひたすら繰り返される時間、より良くやろうとする度にどんどん事態が悪化していくという悪夢的展開。
 この作品を観て時に連想したのは、小学校のときの習字の時間でした。10枚も20枚も書くのですが、なぜか最初に書いたのが一番うまく書けているという・・・・・・。
by duznamak (2007-07-29 22:07) 

ask

>記事のタイトルが素敵
いや、ちょっと響きが良くないな、とは思ったんだけどね。勿論元ネタはわかるよね?

>なぜか最初に書いたのが一番うまく書けている
ふむ。
「良くしようとしてやり直すと、必ずより悪くなる」
というマーフィー則がありそうですね。

>『リバース』って映画
は知らないなぁ。探してみようかな。
by ask (2007-07-30 00:29) 

duznamak

>元ネタ

 「写真を撮ると魂を抜かれる」っていう幕末期・明治期の人々の迷信は、ここから来てるんですよね。カメラのシャッターを切るという行為は、ある特定の瞬間に対して「止まれ、お前は美しい」と命じているようなもの。だから、人々は、「写真を撮るとメフィストお化けが出るぞ」と恐れたんですよね。

 ・・・・・・でも、よく考えると、鴎外による最初の翻訳が出版されるのが1913年なんですよね。ウソ話を作るのって難しいなぁ・・・。
by duznamak (2007-07-30 07:12) 

ask

>ウソ話
一瞬、えっえっ!?と惑乱してしまいました。
でもなかなか面白いです。
by ask (2007-07-30 20:02) 

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