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「かたづの!」(中島 京子) [小説]

予約して1年近く経って、やっと借りられた。
中島京子の作品で読むのは「小さいおうち」についで2作目。

かたづの!

かたづの!

  • 作者: 中島 京子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/08/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


 これは「歴史小説」と呼ぶべきなのか、「時代小説」か?それとも「伝奇小説」か? マイカテのなかでは「小説」に入れるべきか「ファンタジー・…」にすべきか迷った。

 実在の人物の生涯を扱ったものだが、河童とか南蛮渡来の絵の中のペリカンとか狐狸妖怪のたぐいが多く出てくるのでファンタジー要素が強く、「伝奇」的要素はとても大きい。なにしろタイトルからして羚羊(カモシカ)の一本角(片角)、それに宿った霊魂のことであり、はなっからファンタジーとも言えるのだ。

 主人公ヒロインの祢々(ねね)姫(清心院)のキャラはよく立っている。戦国から徳川の世へと移る時代の激動の中で、陸奥地方を含む南部藩という僻地の八戸城主の娘として、妻として、そして母として、さらには「女亭主」(=当主)として人々の幸いを願い、争い・戦を忌避して全力で多くの人々の命を守るために非戦のために邁進、奮闘する凛々しいまでの女丈夫としての姿は感動的。
 狂言回し役の〈かたづの〉の中に封印されたカモシカの独白も観察者視線で面白いが、時至れば能動的に憑依顕現して警告の助言を発するという、いささか逸脱とも思える行動も小気味良い。

 参考文献は多く挙げられているのだが、さてどこまでが史実なのかは勿論わからない。〈かたづの〉という異様な存在がこれまたどれくらいの伝承として(あるいは実物として、どこかの博物館に)残っているのかも知らない。私はこの作品後半の舞台となった遠野について、「遠野物語」も読んでいないという、読書家にはあるまじき(?)状態なので、実はこの本を読む資格はないのかもしれない(すくなくとも準備不足。干菜先生ごめんなさい)。

 ともあれ、中島京子という作家の守備範囲の広さを知らされた一冊だった。

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