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「服従」(ミシェル ウエルベック) [小説]

フランスにイスラム政権が誕生、というセンセーショナルな予言的内容で耳目を集めた作品。遅ればせながら図書館でやっと借りて読んだ。

服従

服従

  • 作者: ミシェル ウエルベック
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/09/11
  • メディア: 単行本


 ウエルベックの作品を読むのは「地図と領土」に次いで2作目。

 がらっと作風を変えた扇情的な政治小説かと思ったら、意外に前作と似た雰囲気で、文学部教授が主人公のアカデミックな環境での(特殊な)日常が描かれる。それが選りに選ってユイスマンスの研究家なのである。
 ユイスマンスなんて、名前は聞いたことがあるが、ゴシック小説作家か、くらいの知識しか無く、代表作「さかしま」をはじめ、1冊も読んだことはない。そこへ克明にその作家の来歴やら、作品の分析やら、思想の背景やらが延々と記述され、また他のいろいろな作家たちについても参照され比較されたりする。これには戸惑った、と言うよりもうちんぷんかんぷんであって、まるで読みこなせない。(ユイスマンスがフロベールとかゾラとか他の誰でも同じだけれど…。)

 さらに、大学教授としての研究の過去からの積み重ね、その詳細についても書き込まれていて、こちらはまぁ読めなくもないが、やはり作家や文学史がらみの部分はわからない。

 もう一つの要素、セックスがらみの私生活部分の描写、これがまた濃厚にかつ具体的に赤裸々に書かれていて、随分ウェイトが大きいのである。

 政治の話は?というと、勿論政界の動き、市井の反応なども時折思い出した様に書かれていてそれなりにジャーナリスティックな描写もあるし、「政局」的な考察部分もある。イスラムの指導者の人格のこととか…。
 出てくる政治家たちが実在の現役だったり(極右の国民戦線とやらの二代目女指導者とか)して、リアリティが凄いのだろうけど、あいにく、フランスの政界なんて殆ど知らないので、イマイチ迫力というか臨場感が伝わってこないのだ。
 そんな中であれよあれよと言う間にイスラム政権が成立してしまい、社会が大転換するのだが、現実的にはどうなのか?というと疑問は残るだろう。極端過ぎる話ではある。とは言え、欧州社会におけるイスラムの存在感の大きさは我々日本人にはちょっと想像を絶するものがありそうだ。

 イスラム教そのものの教理とかについてはもっと勉強しないといけないな、とは感じている。
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