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「ボラード病」(吉村 萬壱) [小説]

図書館の棚の中で〈目が合った〉ので借りて来た。この作品だけを収めた単行本だが、長篇というより「中篇」の長さ。なのですぐに読み終わった。

ボラード病

ボラード病

  • 作者: 吉村 萬壱
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/06/11
  • メディア: 単行本


 このちょっと変わった、と言うより意味不明なタイトルは以前から目にはしていたのだが(その胡乱な印象から作者は奥泉光かと思い込んでいたが、違っていた)、初めて読む作家だ。芥川賞作家なのに、である。

 しかし、軽くない…どころか途轍もない小説だ。
 感想を書くにあたって書評をググってみたら、発刊当時随分話題をさらったと知った。今頃遅い!1年半の遅れである。orz

 当初の小学生のクラスメートとのぎごちない付き合いとか、母親の病的な態度とか、かなり剣呑な雰囲気が続くにしても、ストーリーとしてはさほど複雑ではないのだが、やがて住む町の巨大な災害の歴史とその影響が浮かび上がってくる。それは人々の心に及ぼす影であり、日本全体をも覆う潮流のごとくであり、とても禍々しい雰囲気を醸し出し、〈ディストピア〉の予感が示される。

 とは言え、この作品、単純明快な解釈を拒む曖昧さがあり(それは一方で可能性の多さでもあり)、軽々しく3.11の影響を描いた作品、とのみ規定するにはいかないようだ。と、これはネットで調べた書評群の内容から補強した印象。

 実際、この中には「地震」という言葉も「津波」も「原発」も一度も出てこないのだ。著者の意図はもっと深く広いのだろう。

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