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「保育園義務教育化」(古市 憲寿) [ノンフィクション]

 この本のことはTwitterで中森明夫氏が絶賛していたので知った。
 なるほど素晴らしい本だ。とてもわかりやすく、非常に優しく、読者に語りかける姿勢がフレンドリーである(ときおりジョークも混じる)。小学生でも十分読みこなせるだろう。あっという間に読み終えた。

保育園義務教育化

保育園義務教育化

  • 作者: 古市 憲寿
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/07/01
  • メディア: 単行本



 著者の古市氏の本を読むのは初めてだ。「絶望の国の…」とか「誰も戦争を…」とか話題作を連発しているがイマイチ食指が動かなかった。テレビでよく見かけていて、その喋り方、特に人にものを訊くときの「〜ですか」の発音に、ちょっとぶっきらぼうで乱暴な、違和感を感じてたりして、あまりいい印象を持っていなかったためだ。(最近少しこなれてきたかも?)

 それはそうと、この本、今の日本の子育ての現場のあまりの酷さ(母親が人間扱いされてない=完璧さを求められすぎている)に警告を発している。なぜお母さんばかりが責任を押し付けられ責められなければならないのか、全く理不尽な状態である、と。いきなり展開した論旨にとても共感した。

 集団保育によって非認知能力が培われるということがはっきりしてきた(外国での研究事例などで)と言う。「非認知能力」という言葉は知らなかった。社会性、意欲、自制心や粘り強さ、気概などの生きる力、特性のことだ。IQではなく、EQ(Emotional Quotient=心の知能指数)というのは前から聞き知っており、これとほぼ同じだろう。

 保育の充実というのは今の日本社会、少子化に悩み高齢化に怯える日本社会にとって唯一の解決策と言えるだろう。女性が働きつつ子どもを産み育てやすい社会だ。男にとっても良い社会。
 展開される提案(保育園義務教育化、「無償化」でもいいのだが、利用者が引け目を感じることがないようにという配慮なのだった)は全く非の打ち所の無いくらい説得力がある。中森明夫絶賛も「なるほど」である。

 いろいろな誤解や偏見にエビデンスを明示して批判を加えているが、その様が快刀乱麻を断つごとくで、「専業主婦はごく短期的な珍しい現象だった」「3才児神話は間違い」「保育園育ちのほうが成長後より良く生きている」「草食男子より昔の男の方がウブでセックスもできてなかった」などなど…。面白い。

 ただ、この施策で経済成長がもたらされるという〈利点〉についてはいささか疑問がある。それは先日読んだばかりの「資本主義の終焉と歴史の危機」の本の話が引っかかっているからなのだが、この(資本主義の歴史的な大きな流れの)中で保育園義務化がどのくらい趨勢に抗することができるのかが、自分としてははっきりわからないのだった。
 それはそれとして、日本が急いで採用すべき施策であることは間違いない。お薦め。

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