「八月の日曜日」(パトリック モディアノ) [小説]
2014年ノーベル文学賞を受賞した作家だというので、読んでみようと思った。とりあえず図書館で借りられたのがこの作品だった。代表作というわけではないが、毎日新聞の記事(2014.10.10)で「主な作品」の中には入っていた。
同記事の中での受賞理由は
「もっともとらえどころのない人間の運命を喚起し、ナチス占領下の日常世界を明らかにする記憶の巧みな描写」
とされているし、「ドイツ占領下のパリにおける普通の人々の生活を描いた作品が多い」らしいのだが、この作品はそういう話はほとんど出てこない。もっとも「自己意識の探求など現代的な主題をミステリー的な物語で表現」はこの作品にも当てはまる。「とらえどころの無さ」も然り。
ある女性との逃避行でニースに滞在する男。その成り行きや来歴や仕事など、詳しい事情は明かされないまま、静謐な文体で日常の情景描写が淡々と続く(なのでちょっと冗漫に感じ、その世界に入って行きにくかった)のだが、やがて容易ならぬ非日常的な事態が立ち現れて、謎だらけのミステリアスな不条理な展開が始まり…、と引き込まれる。
それでも語り口はあくまでも静謐なのだが、不思議な味わいがある。迷宮のような不確かな世界の中で翻弄され、結局謎が溶けないまま終わる様子が、不安と焦燥とそれと相反する諦観のごときものを醸し出しているのだった。
同記事の中での受賞理由は
「もっともとらえどころのない人間の運命を喚起し、ナチス占領下の日常世界を明らかにする記憶の巧みな描写」
とされているし、「ドイツ占領下のパリにおける普通の人々の生活を描いた作品が多い」らしいのだが、この作品はそういう話はほとんど出てこない。もっとも「自己意識の探求など現代的な主題をミステリー的な物語で表現」はこの作品にも当てはまる。「とらえどころの無さ」も然り。
ある女性との逃避行でニースに滞在する男。その成り行きや来歴や仕事など、詳しい事情は明かされないまま、静謐な文体で日常の情景描写が淡々と続く(なのでちょっと冗漫に感じ、その世界に入って行きにくかった)のだが、やがて容易ならぬ非日常的な事態が立ち現れて、謎だらけのミステリアスな不条理な展開が始まり…、と引き込まれる。
それでも語り口はあくまでも静謐なのだが、不思議な味わいがある。迷宮のような不確かな世界の中で翻弄され、結局謎が溶けないまま終わる様子が、不安と焦燥とそれと相反する諦観のごときものを醸し出しているのだった。
タグ:ノーベル文学賞
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