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「白蓮れんれん」(林 真理子) [小説]

柴田錬三郎賞受賞。単行本は1994年刊。
 白蓮という歌人の名前は朝ドラ(2014.4〜9)の「花子とアン」を観るまで知らなかった。高校で習った日本文学史の副読本にその名前は載っていたかどうか記憶に無い。ドラマを観てこの人物に少し興味を抱いたので、本屋にも増刷されてたくさん出ていたが図書館で借りて読んだ。

白蓮れんれん (中公文庫)

白蓮れんれん (中公文庫)

  • 作者: 林 真理子
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1998/10
  • メディア: 文庫


 林真理子という作家は処女作のエッセイ集「ルンルンを買っておうちに帰ろう」を30年くらい前に面白く読んだことがあるが、それ以来読んだのは最近の毎日新聞連載の「下流の宴」だけ。「不機嫌な果実」なんてのがあったっけ? あと週刊文春の「夜更けのなわとび」を時々目にしてはいた。最近では百田尚樹問題に勇気ある苦言を呈していたのが記憶に新しい。

 ドラマとはだいぶ事実関係に違いがある。そもそも村岡花子は全く登場しない。ほんの1行だけ「白蓮事件で擁護した」とあるだけ。とても「腹心の友」とは言い難い扱いである。

 小説の方が、その資料の膨大さ(特に宮崎家から供された700通以上の往復書簡の存在が大きい)からして、事実に近いのだろうと思われる。ドラマの脚色ぶりは相当なものだろうし。もっとも、心理描写が主なこの「恋愛」小説においては作家の想像力による脚色が強く施されているのは言うまでもない。描かれている時代も、炭鉱王への嫁入りから筑紫の女王を経て白蓮事件を起こすに至るまで、と「花子とアン」の期間よりも短く、結婚生活の不毛と複雑な家族関係、社交界での振る舞い、そして何より宮崎龍介との恋愛に的を絞っている。白蓮は戦後(「『国際悲母の会』を結成し平和運動に半生を捧げる」という記述が1行だけあるが)社会活動に随分と注力し活躍したようなのだが、そういう後半生については、この小説は興味の対象外としているのだ。これは若干不満の残るところだった。つまりは徹頭徹尾〈恋愛小説〉なのだった。

 その恋愛描写だが、不倫という困難な状況下での物狂おしさはよく描かれている。生々しい記述は上手い、と言えるだろう。しかし、年寄り男性たる自分にとっては遠い世界の話で、共感・感情移入は殆どできなかった。ドラマでは垣間見えなかった細部を知ることが出来たということはある。
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