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「吾輩ハ猫ニナル」(横山 悠太) [小説]

最近の芥川賞候補になった作品。群像新人文学賞受賞。

吾輩ハ猫ニナル

吾輩ハ猫ニナル

  • 作者: 横山 悠太
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/07/16
  • メディア: 単行本


 奇妙な小説である。ストーリーというほどのものはない。設定が変わっている。《日本語を学ぶ中国人を読者に想定した小説》だというのである。が、あくまでも小説の中での設定であって、実際の読者は日本人が大多数なのは勿論だ。

 この設定に伴う特徴が熟語の(通常の日本語表記とは異なり、多分中国語での)漢字表記と、そこに付けられたルビである。例えば、
A)鍋貼(ギョーザ)、出租車(タクシー)、公寓話(アパート)、超市(スーパー)、香烟(タバコ)
B)老頭儿(ロートル)、秋叶原(あきはばら)、曲速(ワープ)、双馬尾(ツインテール)、弯弯曲曲(くねくね)

 A群はいかにもありそうで、実際に中国でその意味で使われているような(発音は全く違うだろうが)印象があるが、B群の方となると、そもそもそんな中国語があるのか?と疑問だ。「くねくね」なんて日本語特有のオノマトペだし。もっとも中国にも日本のサブカルはかなり浸透してるようで、作中に日本のゲームやフィギュアおたくの友人が出て来たりするので、もしかしてホントに普通に使われているのかもしれない。

 そういう実験的表現技法のトンデモぶりとは別に、青春小説的(教養小説ではない)部分とがある。
 内容を追うと、どうということもない青年(日中のハーフ、学生)の彷徨、しかもどことなく浮ついた、自分を見失い、その場しのぎのふわふわした、いい加減で適当な態度と行動が描かれる。地に足がついていない印象で、幻想的というかリアルでない状況が続く。面白い部分もあるがやや退屈。
 最後の方の(来日しての)メイド喫茶の場面は妙に幻想的かつ暴力的展開で、ちょっと意味不明だった。他にもいろんな仕掛けやパロディがあるらしいのだが、漱石の「猫」は高校時代に読んだけれど殆ど覚えていないので、関連に気づくところがなくて残念。

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