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「創作の極意と掟」(筒井 康隆) [ノンフィクション]

>「これは作家としての遺言である」
>小説界の巨人が初めて明かす、目から鱗の全く新しい小説作法!


創作の極意と掟

創作の極意と掟

  • 作者: 筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/02/26
  • メディア: 単行本


 いわゆる「文章読本」(小説の書き方)である。この手の本は殆ど読んだことがないのだが、とても興味深く面白かった。読みやすいしわかりやすいし、著者の創作についての今までの長年の経験と研鑽(膨大な読書量とその整理された記憶)に基づいて到達し得た境地と多くの知見を様々なキーワードごとに章立てして惜しげも無く開陳しており、現役作家や作家志望者へのアドバイスとなっている。

そのワードたるや、
凄味、色気、揺蕩、破綻、濫觴、表題、迫力、展開、会話、語尾、省略、遅延、実験、意識、異化、薬物、逸脱、品格、電話、羅列、形容、細部、蘊蓄、連作、文体、人物、視点、妄想、諧謔、反復、幸福
…と盛り沢山に、小説表現で問題となる各種の切り口について、具体的にその意味合いや位置づけや心得やらを詳述している。引用される内外の文献も豊富だし、以前から氏の勉強精励ぶりは周知のことではあったが、どちらかと言えば文壇の主流と言うより奇想のドタバタのスラプスティックかつ実験的な作品・作風を得意とする、いわゆるマトモな文学から外れた異色作家のイメージがあったのに、この本で表明されている考え方はとてもまともで文学者としてむしろ常識的な印象があり、意外と言えば意外(もっとブっ飛んだのを期待していた)。そういう意味では内容自体にはあまり驚きはなかったのだが、いちいち深く頷ける話であり、とても説得力がある。感服することしきり。
 「反復」の章は「ダンシング・ヴァニティ」における様々な反復技法をこれでもかと開陳して、瞠目の著者本人解説だった。ここまで詳しく自作を解説するのを見るのは多分初めてだろう。「そうだったのかぁっ!」と眼から鱗。

 巻末に《索引》がちゃんと付いていて、引用された小説作品や作家名が沢山載っている。こんなコンパクトな本にしては異様に充実している。ハンドブック的に使えそうだ。

 私自身は小説を書こうなどという大それた気は毛頭ないので、この本は実用的な役にたつわけではないのだが、小説を書くという事はかくも大変な営みなのかということがよくわかり、作家へのリスペクトが増した。おすすめ。
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藍色

こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
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お気軽にどうぞ。
by 藍色 (2015-02-13 15:44) 

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