「何者」(朝井 リョウ) [小説]
話題沸騰した(戦後最年少23歳で)直木賞受賞作。この作家の作品を読むのは
「桐島、部活やめるってよ」に続き2作目。
就活がテーマであり、著者自身がつい最近身を持って体験した就活の経験が生かされて出来上った作品だろう。つまりとてもリアル。
ストーリー展開にこれほど Twitter が深く関わる小説は初めてかも。(あの悪評だったTVドラマ「すななれ」とはレベルが違う。)
著者はユーザーとして Twitter を使いこなしている、と見えた。(公式アカウントは2010.11.30登録、7月1日5PM現在フォロー81、フォロワー160,640、ツイート2,720回←これは少ない、著者の就活は2011年からだから、他にサブ垢があるんじゃなかろうか?)
就活に関しては、周知の通り問題なイメージが強い。「就活のバカヤロー」は読んでいないけど、100社以上も応募するみたいな度を超えた活動が本来の大学の学業を圧迫しているとか、就活疲れと内定が取れないことに悩んで鬱病になった自殺者が増えているとか…。一方で、それほど苦労せずに内定を勝ち取った者(割合としても結構多い)に訊くと「視野が広がり、知り合いも増えて楽しかった」的な意見もあるらしいのだが。それにしても趨勢としては異常には違いないだろう。
登場人物はみな同じ大学の学生ばかりの就活グループで、その活動と交流が描かれる。クラスメート、ルームメイト、その友人、その同棲者と、5人。いわゆる〈意識高い(笑)系〉と、のほほん系、クリエイティブ志向の〈斜に構え〉系など。主人公はそのどれでもなくて…その何者であるかは最後に明かされる。
ES(エントリーシート)の書き方練習から始まって、筆記試験や面接(グループディスカッション)などのひと通りのプロセスが具体的に描かれているので、ドキュメンタリ的な興味深さもあるが、肝はキャラの立ったそれぞれの人物の心理である。会話でそれが際立ってくる。このへんは作者の技巧は上手い。圧巻は相手のスタンスの虚偽性を暴いて面罵するシーンで、2回ある。その両方ともそれぞれ女性からなされるというのも一興か。
そして主人公の正体が、言わばどんでん返し的展開をする、その結末の仕掛け・構成がなかなか面白い。Twitterのツイートの羅列がこんなふうに活かされる小説は初めてだ。ホラー風味さえ感じた。
この作品、「昨今の就活とは珍なるものでござるな」みたいなシニカルな上から目線ではなく、それぞれ一個の独立した人格がゆれ惑い、必死に生きようと格闘する、個々に違った多様な生き様が真摯に描かれていて、読み応えがある。
それにしても就活とTwitterとは相性が悪いのではないか、というのは改めて思った。サブ垢を使わなきゃいけなくなるようではまともな使い方ではない!と、そうでない私は断言しちゃおう。そう、ここで出てくるTwitterのあり方は、ゆがんだ変則的な、真っ当でない使い方なのだ。つまりFacebook的リア充演出パターン。そして、暗い情念を吐き出すサブ垢という病的快楽と。
※ しかし、サブ垢登録に使うメールアドレスは、実際には使用してないものを使うものではないのかな?と疑問。
※ 先日読んだ、『意識高い系』という病~ソーシャル時代にはびこるバカヤロー」の著者、常見陽平氏がレビューしていた。→ 就活の理不尽さ描いた直木賞作 人材コンサルタントの評価は。
「桐島、部活やめるってよ」に続き2作目。
就活がテーマであり、著者自身がつい最近身を持って体験した就活の経験が生かされて出来上った作品だろう。つまりとてもリアル。
ストーリー展開にこれほど Twitter が深く関わる小説は初めてかも。(あの悪評だったTVドラマ「すななれ」とはレベルが違う。)
著者はユーザーとして Twitter を使いこなしている、と見えた。(公式アカウントは2010.11.30登録、7月1日5PM現在フォロー81、フォロワー160,640、ツイート2,720回←これは少ない、著者の就活は2011年からだから、他にサブ垢があるんじゃなかろうか?)
就活に関しては、周知の通り問題なイメージが強い。「就活のバカヤロー」は読んでいないけど、100社以上も応募するみたいな度を超えた活動が本来の大学の学業を圧迫しているとか、就活疲れと内定が取れないことに悩んで鬱病になった自殺者が増えているとか…。一方で、それほど苦労せずに内定を勝ち取った者(割合としても結構多い)に訊くと「視野が広がり、知り合いも増えて楽しかった」的な意見もあるらしいのだが。それにしても趨勢としては異常には違いないだろう。
登場人物はみな同じ大学の学生ばかりの就活グループで、その活動と交流が描かれる。クラスメート、ルームメイト、その友人、その同棲者と、5人。いわゆる〈意識高い(笑)系〉と、のほほん系、クリエイティブ志向の〈斜に構え〉系など。主人公はそのどれでもなくて…その何者であるかは最後に明かされる。
ES(エントリーシート)の書き方練習から始まって、筆記試験や面接(グループディスカッション)などのひと通りのプロセスが具体的に描かれているので、ドキュメンタリ的な興味深さもあるが、肝はキャラの立ったそれぞれの人物の心理である。会話でそれが際立ってくる。このへんは作者の技巧は上手い。圧巻は相手のスタンスの虚偽性を暴いて面罵するシーンで、2回ある。その両方ともそれぞれ女性からなされるというのも一興か。
そして主人公の正体が、言わばどんでん返し的展開をする、その結末の仕掛け・構成がなかなか面白い。Twitterのツイートの羅列がこんなふうに活かされる小説は初めてだ。ホラー風味さえ感じた。
この作品、「昨今の就活とは珍なるものでござるな」みたいなシニカルな上から目線ではなく、それぞれ一個の独立した人格がゆれ惑い、必死に生きようと格闘する、個々に違った多様な生き様が真摯に描かれていて、読み応えがある。
それにしても就活とTwitterとは相性が悪いのではないか、というのは改めて思った。サブ垢を使わなきゃいけなくなるようではまともな使い方ではない!と、そうでない私は断言しちゃおう。そう、ここで出てくるTwitterのあり方は、ゆがんだ変則的な、真っ当でない使い方なのだ。つまりFacebook的リア充演出パターン。そして、暗い情念を吐き出すサブ垢という病的快楽と。
※ しかし、サブ垢登録に使うメールアドレスは、実際には使用してないものを使うものではないのかな?と疑問。
※ 先日読んだ、『意識高い系』という病~ソーシャル時代にはびこるバカヤロー」の著者、常見陽平氏がレビューしていた。→ 就活の理不尽さ描いた直木賞作 人材コンサルタントの評価は。
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