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「激マン!」1〜5(永井 豪) [サブカルチャー]

 この漫画の存在を知ったのは、ニコ生で岡田斗司夫氏が「一巻を試しに読んだら面白くてすぐに残り全巻を買いに走った」と絶賛していたから。漫画本を一気にまとめて5巻買うというのは私にしては珍しい。
激マン! 1 (ニチブンコミックス)
激マン! 2 (ニチブンコミックス)
激マン! 3 (ニチブンコミックス)
激マン! 4 (ニチブンコミックス)
激マン! 5 (ニチブンコミックス)



 いくつか書店をまわったが置いてなくて、秋葉原のK-BOOKS店で買った。あそこの品揃えはすごい(オタク向けではあるが)。

 この「激マン!」というタイトルは明らかに例の「バクマン」のもじりであろう。作中の主人公つまり永井豪のペンネームが「〜豪」でなく「〜激」という設定にしてあり、タイトルとどっちが先かわからないが実名ではなく、純然たるノンフィクションとはしていない。漫画家が作品を描く過程のエピソードを綴っており、一種の自伝的要素と、漫画創作の内情を明かすという要素とがある。つまりバクマンと同じスタイル。
 ただ「バクマン」はフィクションの要素が大きいが、「激マン!」の方はほとんど事実に即していると思える(もっとも記憶がやや不確かなので作者自身が「正確には再現しきれていない」と述懐しているが)。

 永井豪の「デビルマン」という作品は、私にとって最も印象の深い、面白かった漫画の一つであり、今まで読んだ漫画の中でおそらく五本の指に入ると言っていい、彼の最高傑作だろう。(迂闊にも「BSマンガ夜話」でこれを取り上げた回は見逃してしまった。オンデマンドで観られるのかな?)

 1973年の「少年マガジン」(本作中では「少年マンガ人」)連載当時、まだ大学生だった頃に、実際にリアルタイムで毎週興奮して読んだ記憶が鮮明であり、単行本も勿論買って何度も読んだので、この「激マン!」の中で再現される各シーン(これが全体のおよそ半分を占める!)には、個々に対応するオリジナル画像やセリフが鮮烈に蘇り、絵柄の微妙な差あるいはかなりの違いがはっきりとわかるのだ(こちらの記憶変成もあるかもだが)。
 そもそも自分の作品のメイキングを描くのに、オリジナル画像を使わないでいちいち描き直すというのはどういうことなのか?大変な労力なのにと思うが、版権(講談社)との関係があるのだろう(本書は日本文芸社刊)。それと、実はこう描きたかった、という〈描き直し〉願望もあったかもしれない。いや、むしろそっちの方がメインかも。本当はもっと過激に描きたかった、というシーンが、その通り実現されて出てくるのはなかなかのものである。岡田氏も言って(画面にアップでその場面を見せて)いたが、その白眉はなんといっても「妖鳥シレーヌ編」でのセックスシーンであろう。なるほど、これは少年誌にはいくらあの頃の読者年齢層が高めであったとは言えとても載せられたものではなかったはずだ。
 総じて女性のヌード場面、ポルノ映画で言えば「肌色成分」がオリジナルより数段多い。
 とにかくこの作品への作者の思い入れは強烈で、また描くのに異常に精力を費消したため、当時他誌に連載していたものを次々にあえて終了させるという、編集者との難交渉を経てまで注力したかった作品なのだった。

 それにしても、当時に夢中で読んでいた時は意識しなかったが、こんな風に単なるギャグマンガでなくSFアクションヒーローもののストーリー漫画をやりたい、という素朴な動機で始めたものが、先の見えないまま手探り状態で徐々にこんな怪物的作品に仕上がっていったとは知らなかった。本来端役だったはずの飛鳥了のあの正体が定まったのは結末寸前だったなんて!

 この作品の特に後半のテンションは尋常でない。壮大な聖書的な世界が現出していた。(>「黙示録の世界が始まろうとしていた。アルマゲドンは不動明と飛鳥了との愛と憎悪の戦いだった」)。
 当時も、ずいぶん聖書(黙示録)、魔女狩り(牧村邸を襲う群衆の「あんなに可愛いのに魔女なのか?」「だから魔女なんだ。美しさで醜い本性を隠すのだ」という会話とかが思い出される)、悪魔の両性具有等に関する背景知識をちゃんと持っているんだなと思ったものだが、意外や作者の知識はそれほどでもなかったらしい。ブレーンがいたことが明かされる。
 そして連載の終わりを通告されて、それを少し延長してもらって、それでもかなり端折ってできあがった作品だったとは。確かに当時読んでいたとき、展開に若干の〈急ぎ〉感はあったけれど、よくまとめたものだと思う。
 ただ、デビルマン軍団が、日本の再軍国化を危惧しての警告的な象徴として構想した、という点は気がつかなかった。勿論シリアスな社会的視点は感じたので、いわゆるセカイ系的な枠には収まらないものではあったのだが…。これを描いている今現在の時代に対する危機感が感じられて、当時にさかのぼって投影されているような部分もあるかも。
 とにかく、原典のファンには必読。知らない人は、まず「デビルマン」を通読してでも読んだらいいと思う。

【追記】2013.02.21
 第6巻が出たので早速購入。
 第1章「デビルマン」の章、完結。謎だったラストシーンに関する説明があったので、長年の胸のつかえが取れた感じ。これで一区切りとなると、次章は「バイオレンス・ジャック」なんだろうな。
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