「舟を編む」（三浦 しをん）

図書館でだいぶ待たされて読んだ。三浦しをんの作品で読むのは「まほろ駅前多田便利軒」についで２冊目。
　2011年度本屋大賞受賞作。

舟を編む

• 作者: 三浦 しをん
• 出版社/メーカー: 光文社
• 発売日: 2011/09/17
• メディア: 単行本

　「本屋大賞」は「書店員こそが（商品と顧客という形で）本と読者を『最もよく知る立場』にあると位置づけ、投票資格者を書店員主体にしている」らしい。つまりは〈本の目利き〉ということだと思うのだが、その割には候補になる作品が揃いもそろって、既に十分売れているベストセラー本ばかりなのはいただけない。目利きなればこそ、宣伝力がないために知られず埋もれている、きらりと光るマイナーな本を掘り出して読者に届けるという姿勢を持って欲しいものだ。それが書店員の矜持じゃないだろうか？ほら、書店員がお薦めのポップを作ったために俄に売れ出した例なんてのもあることだし。
　まぁそれは余談だが、この作品、たしかに面白い。何よりも異様にリーダビリティが高い。この小説の扱っている対象が出版社の辞書を編纂する編集者というのも、書店員の琴線に触れたのかな？とも思う。

　新しく辞書を作るという膨大な作業に長年心血を注ぐ人たちの、仕事に対する真摯な取り組みが描かれる。辞書を編むという仕事についてはあまり良く知らなかったので、興味深い。

　そして恋愛模様。女性作家なので欠かせない要素なんだろうけど、すこし過剰な気がした。勿論本を作るのは生身の人間なので、仕事とは別に個人としての生活もあるのだが…。香具矢というキャラは若干不自然な感じ。それを言うなら主人公の馬締はもっとユニークだが。そう、登場人物それぞれのキャラ設定が極端なのである。これはラノベや漫画の作り方ではないか？恋愛シーンはいわゆる「ラブコメ」的で、不器用極まる見栄えの悪い男に、美女が寄ってくるという殆どあり得ない厨二願望パターンでは？
　そういう要素は、せっかくの辞書編纂という偉業をどうも軽く扱ってる感がしてしまう。いや、情熱や苦難は充分描かれ感動的ではあるんだけれど、恋の話はこんなに要らんでしょう。

　ところで、舞台設定なのだが、少なくとも現在（＝辞書の完成）よりも15年くらい前から始まっている設定なので、旧来通りのやり方の〈用例採集カード〉というアナログな手書きの紙メディアが使われているのだが、かと思うと、ケータイや会社でメールが普通に使われているし、いつの時代の話なんだ？とちょっとわからなくなった。今、と言うより、だいぶ前から電子化されている筈じゃないか？と若干の違和感。参考文献や取材で昔の苦労話を聞いた上で、現在の環境にそのまま持ってきてしまったのだろうか？

コメント 5

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by bestmania運営事務局 (2012-07-03 17:03) 

>askさんの記事をユーザーにとって「価値の高いブログ」としてランキング第１位という形で、紹介させて頂いております。

　これにはびっくりしてしまいました。提示されたURL末尾の数字はまさに「トップ！」を匂わしているし。そんな騒ぎになっているにしてはPVのアクセス状況に変化はないので、どういうことだ？と件のURLを見に行ったら、なんと、person/0000000001/とは三浦しをん氏のことではありませんか。確かにそこには私のこの記事が堂々「トップ」として掲示されていました。
　しかし、その得点？が「２ポイント」ってなんでしょう？これがなんでトップなんでしょうか？まさに羊頭狗肉。
　普通「ランキング１位」と言ったら、サイトのトップページの中に示されるか、あるいは１，２クリックで跳べる場所に置かれるべきものでしょう？それが実際はこれとは！バカにしてませんか？
　よくあるスパムメールの「欲求不満の女性とつきあってお金がもらえます」とか「父の遺産６千万円を受け取って下さい」と同じ類いの匂いを感じました。

>弊社サイト『小説・文学マニア』をaskさんのブログやリンク集などでも同様に、ご紹介頂くことはできますでしょうか。

　残念ながら、私のブログのサイドバーには「リンク集」のカスタムペインはありません。人によっては作ってる人も居るようですが、作り方がよくわかりませんし、作る気もありません。
　そもそも、冒頭に述べたように相当不快感を感じ、「嫌儲」精神を刺激されましたので、きっぱりとお断りいたします。
by ask (2012-07-05 00:02) 

> よくあるスパムメールの「欲求不満の女性とつきあってお金がもらえます」とか「父の遺産６千万円を受け取って下さい」と同じ類いの匂いを感じました。

　当選商法っぽいですよね、やり口が。「1位」云々無しで、「リンク貼ってください」だけ言われる方が、まだ好感が持てるというものです。

　ところで、2位のブログも2ポイントですね。両ブログの差は何だったのでしょう？

　person/**********/は、現在、0000004007まであるようです。10桁もいらなくね？ っつーか、99億9999万9999人って、ひょっとしたら歴史上存在した“文字が書ける”ホモ・サピエンスの累計個体数よりも多いんじゃね？ と思いました。
by duznamak (2012-07-10 16:22) 

>2位のブログも2ポイントですね。両ブログの差は何

それも謎ですが、それより何より、三浦しをんという（今や）メジャーな作家についての書評ブログが、最高で２ポイントしかないという方がずっと奇異ですね。まだ立ち上げたばかりだから？

>person/**********/は、現在、0000004007まであるよう

わざわざ調べたんですか？ｗ
さすが、調べ物マニア！
（「才能の無駄遣い」っぽくもあるけど）
この過剰とも言える桁数設定、iPV6時代を睨んでのことかな？
by ask (2012-07-11 11:38) 

>本屋大賞を受賞した三浦しをんの傑作が、実写映画化決定！
>　【主演：松田龍平、宮崎あおい】2013年4月全国ロードショー

という情報が！
本屋大賞受賞作の映画化は『天地明察』に続いて２作目か？
そのどっちにも宮﨑あおい出演とは。
by ask (2012-07-20 21:29)