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「ふがいない僕は空を見た」(窪 美澄) [小説]

1年以上前の第1回Twitter文学賞で7位に挙げられたのをUstで見て、読もうと思い図書館に予約したのだが、大人気でやっと今になって読めた。他にもいろいろな賞を得ていて、2009年「ミクマリ」で第8回「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。2010年にはその主人公斎藤くんと周辺の人々をめぐるこの連作短編集で「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、2011年「本屋大賞」第2位、第24回「山本周五郎賞」受賞、と高い評価を得ている。

ふがいない僕は空を見た

ふがいない僕は空を見た

  • 作者: 窪 美澄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/07
  • メディア: 単行本



 これの直前に読んだ「桐島、部活やめるってよ」と似た題材・構成なので、ちょっとシンクロニシティを感じた。図書館で順番が回ってくるのは全くの偶然なのだけれど…。高校生群像が主人公を変えて一人称で語り継ぐオムニバス、という点で同じなのだ(高校生でない主人公も出て来るが)。
 ただ、雰囲気は随分違う。こっちの方がよりドラマチックであるし、より「下流」の貧困が覆う世界を描いている。性描写も過激。はじめは「おいおい」と思わされるほどのセックス描写に気圧されたが、読んでいくと切なくなってくる。みんな健気に生きている。
 文章は新人にしては非常にうまい。読みやすいし描写は的確で、無駄な部分が殆ど無い簡潔さ。読んでてつるつると心に入ってくる。感服した。

山本文緒氏評では、
>「この世に生まれ落ちることの苦悩と喜び、その凄まじい痛みに涙が出た」

とのこと。確かに、人間がこの世で味わう様々な心の動きがうまく表現されている。特に終章の、斉藤くんの母親の助産師としての生活、お産の描写は迫力と真実味がある。著者は妊娠・出産、女性の健康関連のフリーライターだったとかで、納得できる視点である。
 これも「桐島、部活…」と同様今秋映画化らしい。

※ところで、「ふがいない」は「腑甲斐ない」が正しいのだが、時々「不甲斐ない」という表記に出くわす。これだと二重否定なので「甲斐がある」事になっちまうよね。
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