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「音もなく少女は」(ボストン テラン) [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

昨年のミステリ関連のベストテンで、「このミス」2位、「週刊文春」5位を取った作品。しかし、ミステリという範疇でくくっていいものか? たしかに殺人事件は複数起こるが、犯人探しの推理は全くない。
音もなく少女は (文春文庫)

音もなく少女は (文春文庫)

  • 作者: ボストン テラン
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/08/04
  • メディア: 文庫



 広い意味での犯罪小説という言い方にしても、それではこの作品の深さを表現できないような気がする。それくらい、ここでは人間の苦悩や憎悪、希望や愛情が極めて赤裸々に描かれている。しかも、主役は女性たち。逆境に痛めつけられながらも、負けず凛々しく生き延びるその力強さと優しさ!
 タイトルが示すように、主人公のイヴは聾者で、そのハンディのために苦労するが、それ故に得られた得難い出会いもあった。
 社会の底辺に生まれた過酷な運命と闘いつつ成長し、幸福も掴みかけるが、アメリカ社会の病巣とも言うべき「悪」に踏みにじられ…と痛い展開で進行するストーリーは緊迫感とリアルさに満ちている。訳は部分的にはこなれていないところもあったが、概ね読みやすく引き込まれる。また、写真という表現術に出会って才能を開花させるその過程の描写、写真というものの持つ強い力に関する記述にも目を見張った。光画部クラスタは必読。感動。
タグ:ミステリ
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