「ハーモニー」(伊藤計劃) [SF]
伊藤計劃の作品は初めて。
「あなたのための物語」 の腰巻に「イーガン、チャンを経由し伊藤計劃に肉薄する…」などと書いてあったので、遅まきながら読んでみようという気になった。
「虐殺器官」という前作の存在も知っていたが、どうも暴力的な荒々しい作品らしいのでとっつきにくくて敬遠していた。こっちは2009年度日本SF大賞受賞作品なので、これを読もうと思って図書館で予約して借りた。
"Emotion Text Markup Language"なる、HTMLみたいなタグ表現が、始めは目障りだったが、それほど頻出するわけでもなく、文章のメリハリ付け効果になっている。(それにしても、このタグに対応したリーダーで読んでみたかった。電子本化する暁には、ぜひこれをプレーンテキストのままにするのでなく、HTMLで擬似的に置き換えて工夫してもらいたいが、それでは一種の改竄になってしまうか?)
21世紀後半、WatchMeと呼ばれる恒常的体内監視システムによって各個人の健康が完全に管理されている一種の理想的社会、ユートピアのディストピア性が措定され、それへの反抗が描かれるのだが、従来のユートピア≒ディストピア的な考察にとどまらず、〈意識〉の起源の問題というSFならではのアイディアを注入して、単なる全体主義社会以上に次元の高い世界の招来を描いている。
実に読み応えのある作品だった。
「あなたのための物語」 の腰巻に「イーガン、チャンを経由し伊藤計劃に肉薄する…」などと書いてあったので、遅まきながら読んでみようという気になった。
「虐殺器官」という前作の存在も知っていたが、どうも暴力的な荒々しい作品らしいのでとっつきにくくて敬遠していた。こっちは2009年度日本SF大賞受賞作品なので、これを読もうと思って図書館で予約して借りた。
"Emotion Text Markup Language"なる、HTMLみたいなタグ表現が、始めは目障りだったが、それほど頻出するわけでもなく、文章のメリハリ付け効果になっている。(それにしても、このタグに対応したリーダーで読んでみたかった。電子本化する暁には、ぜひこれをプレーンテキストのままにするのでなく、HTMLで擬似的に置き換えて工夫してもらいたいが、それでは一種の改竄になってしまうか?)
21世紀後半、WatchMeと呼ばれる恒常的体内監視システムによって各個人の健康が完全に管理されている一種の理想的社会、ユートピアのディストピア性が措定され、それへの反抗が描かれるのだが、従来のユートピア≒ディストピア的な考察にとどまらず、〈意識〉の起源の問題というSFならではのアイディアを注入して、単なる全体主義社会以上に次元の高い世界の招来を描いている。
実に読み応えのある作品だった。
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