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「母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き」(信田 さよ子) [ノンフィクション]

michaelaさんのブログでだいぶ前に紹介されていて、興味を惹かれていた本だが、長く To Read状態であったのを、図書館で順番待ちの上で借りられたので読んだ。
母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き

母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き

  • 作者: 信田 さよ子
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2008/04/10
  • メディア: 単行本
なんとも、「壮絶」な内容である。意外というのではないが、こういう話は、その性質上あまり表には出てこなかったのだろう。家庭という閉じた世界の、これまた閉じた個人の内面の事象だから。それに触れる機会を持ち、問題の広範な広がりと深刻さに気がつき、報告し処方箋を示した著者の仕事は称揚すべきである。
 「アダルトチルドレン」という言葉は人口に膾炙しているが、「墓守娘」はまだだろう。しかし、その規模においては後者の方が遥かに勝っているのではなかろうか?
 「墓守娘」とは、一見良好な母娘関係に見えながら、母親の娘に対する圧倒的な支配、干渉、抑圧に苦しむ娘たちのことである。自己の存在意義を娘の人生に託して、自覚の無いまま娘を私物化し、同化し、操ることを当然のごとくふるまって来た母親たちが弾劾される。そしてその裏には家庭と真摯に向き合わない父親の情けない存在がある。あまたの実例が列挙されて、お腹いっぱいになるほど。
 以前から、どうも〈日本の家族〉というものが危ないようだ、という言説は沢山ある。古くは山田太一の「岸辺のアルバム」なんかもそうだ。多くの精神科医もそういう著作を出している。その背景には、地域コミュニティの崩壊や情報化、格差社会、など文明全体の軋みがあるので、単なる家族論だけでどうこう出来るものでもないだろうが、とりあえずの緊急避難的対処法はこの本の中で述べられている。
 状況を対象化・意識化し、「怒り」を保持すべし。「罪悪感」は払拭しきれないだろうが、相対化すべき。仲間と語り合うべき。などなど。
 この本は決して母親を叩きつぶすための本ではない。母親をも真っ当な生に目覚めさせる本である。この本を読んで救われる女性は多いだろうし、それは母親にも言えるだろう。そして父親にも。全ての日本人必読、と言えるが、悲しいかな独身の私には直接関係はないのであった。
タグ:母親
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