「中国に人民元はない」(田代 秀敏) [ノンフィクション]
以前読んだ「中国の不思議な資本主義」と似た本だ。かなり共通した部分がある。
腰巻きが凄い。上の画像にはついていないが、
「中国に公私混同はない。中国に友達の輪はない。中国に裁判所はない。中国に権力と権利との違いはない。中国に地方公務員の汚職はない。中国に農民の失業はない。…資本主義はない。13億の巨大市場はない。決済はない。契約不履行も金利も金融も土地バブルも私有財産も物権法も簿記もない。資本、定期券や回数券、ホーレンソー、企業、卸問屋、中華料理、相場、市場経済もなにもかもない。中国ないない尽くし」
これら日本人が当然中国にもあると思い込んでいるものが、実は名ばかりで実体はまるで違った、一言で言えば〈ヘン〉な〈マトモじゃない〉有り様であるということが次から次に提示される。唖然とするばかりである。こんなんでよくまぁ国家の体をなしているなぁ、と。
各章は短く、簡潔にまとまっているので読み易くわかりやすい。
ただ、「〜はない」という表現に拘って全編を通しているので、「レトリック負け」とでも言うべき場合もある。「中国に中華料理はない」から、「えーっ!」と思って読むと、「北京料理」「四川料理」「広東料理」があるだけ、と来た。本場だからより正確に分類されてるだけではないか?修辞に溺れてるんじゃないか?と一瞬脱力させられたが、いや、実はその裏に「全国市場」が成立していないので食材が地域的に限られてしまうがゆえの分化なのだ、とわかるとまたなるほどと思わされる。
それにしても経済のあり方をはじめとして、あまりにも普通の先進国と違う状況の前には絶句するしかないのだった。
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