「シンギュラリティ・スカイ」(チャールズ ストロス) [SF]
イギリスで今盛況という「ニュー・スペースオペラ」の一冊。「SFが読みたい-2007年版」で海外SF第3位にランクされていたので読んでみた。同じ範疇に入る「ニュートンズウェイク」は訳がひどすぎたが、こちらはそこまではひどくなくて、そこそこ楽しめた。
が、原文が元々説明不足なためか、読みやすいとは言い難い。様々なSFガジェット(因果律侵犯装置、自己増殖型ナノマシン、ブラックホール駆動超光速航法などなど)がいきなり全く何の説明もなくふんだんに使用される。「心の社会」なんてのまで出て来る。共産主義を戯画化してたり、文系的にもハードで、初心者には無理な作品だ。
「スペースオペラ」という要素は、宇宙を舞台にした派手な戦争シーンが克明に描かれているところだが、「ニュー」が冠されるだけあって凡百のスペースオペラとは質的に異なる。なにしろ、相手があまりに異質な存在で、普通のまともな戦いが成立しないのである。
半分近くまで行ったところで、やっと「エシャトン」なる、進化の閾値を超えて自立した超AIの超越的存在が、人類に何をしたかが説明される。(これで当然連想したのが、アメリカが全世界の全ての情報通信を傍受しているシステム、エシュロンのことだ。あと「ターミネーター」のスカイネットも)
まー読み応えのあるSFではあった。
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