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「居眠り磐音 江戸双紙1 陽炎の辻」(佐伯 泰英) [小説]

どうした風の吹き回しか自分でもわからないのだが、ちょっと時代小説でも読んでみようか?とふと思った。
 時代小説と歴史小説との違いは微妙でよくわからないのだが、「歴史〜」が実在の人物(多くは有名)を史実に基づいて描く(解釈する)のに対して、「時代〜」はフィクションで娯楽色が強く、剣豪や捕物、人情などのサブジャンルがある、といった程度の理解だ。

 歴史小説なら少しは読んでいるが、時代小説は今までに読んだものが何かあるか?と考えたら、藤沢周平の「蝉しぐれ」くらいしかない。あとは「御宿かわせみ」を1冊だけか。TVドラマの時代劇は子供時代に結構たくさん見てるだろうが…。
 それにしても全くファンとは言えない。なのになぜ今ごろ、他に読むべき本は山のようにあるのに、敢えて手を出そうとしたのか?いや、別に、これから本格的にこの世界に沈潜して多数読み込もうというのではない。むしろ逆で、この世界は従前通り無視し続けて良いという結論を導き出すべく、ことをはっきりさせたいので確認のために、という意味合いがあったのだ、と理屈付けようと思えばできるかもしれない。

 そこで、一体時代小説で広く読まれているのは何だ?とググってみたら、時代小説シリーズランキングベスト30│ブックオフオンラインというサイトが目に止まった。覗いてみたら、堂々の第1位に
「居眠り磐音江戸双紙シリーズ」佐伯泰英
があった。なんと49冊も出ている。全然知らなかった。
陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙 1 (双葉文庫)

陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙 1 (双葉文庫)

  • 作者: 佐伯 泰英
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2002/04/09
  • メディア: 文庫


 しかも、この著者、別のシリーズで4,6,8,11,15,18,26,30位も取っている。ベスト8位までの間に四つ、30位までの中に九つもある!圧倒的だ。サブジャンルキーワードは「剣豪/人情」が多い。剣豪ものと言ったら、むしろ「非情」な世界を扱うものなんじゃないか?と思うが、その機先を制して、というか意外な組み合わせで混淆させて妙味を出す、という手法なのではなかろうか?(実際読んでみてそう思った。これがこの作者の持ち味なのだろう)

 で、この記念すべき1作目。出たのはなんと13年前の2002年、双葉文庫オリジナル。
 読み始めたら、さすがにリーダビリティが高い、どんどんページが進む。異例の速さで読み終わった。勿論、面白い。ストーリーテリングの腕はさすがだし、政治的経済的要素もちゃんとストーリー展開の重要な設定部分として盛り込んであって時代考証もしっかりしており、〈セカイ系〉的ないい加減さ・怠慢さはなく、むしろ「歴史小説」的な客観性すら感じさせる。で、人物描写もいい(人情的なところも、殺伐としたところも両方あり)し、殺陣のチャンバラ描写も迫力がある。エンタテインメントとして王道を行く作品だろう。主人公・坂崎磐音の造形(居眠りしてるのかと見まごうばかりの穏やかさなのにめっぽう強い)が、心憎いというか、ちょっと〈ご都合〉を感じさせなくもないくらい良く出来ていて、まぁこれが最大の魅力(上述した「妙味」持ち味)なんだろう。

 で、そういうのを確認できたので、もう続編は読まなくていいやと、当初意図した結論に達したのでアリマス。

タグ:時代小説
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