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「おしかくさま」(谷川 直子) [小説]

例によって、と言うか、「またか!」と言われそうだが、大森望氏の昨年度お勧め本リストの中の一冊。(ちょっと大森依存が強すぎる気がする。大丈夫か?俺)
第49回文藝賞受賞作。

おしかくさま

おしかくさま

  • 作者: 谷川 直子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/11/09
  • メディア: 単行本


 いわゆる新興宗教をテーマにした小説。パロディ的におちょくってる感が強かった。なにしろ「お金が神様」で、信じればお金が増えるといい、社(やしろ)が銀行のATMで、そこにお参りし入出金することで金が清められ活性化する、などというトンデモ風に戯画化された拝金主義なのだから。それにハマる登場(高齢女性たち)人物像、来歴もそれぞれに絵に描いたように不幸で貧乏で〈ダメ〉なのであった。話がとんでもない割には語り口は平明でリアルで、いかにもあり得そうな雰囲気を醸し出している。ファンタジーではなく、あくまでも普通小説なのだ。
 これは正に現世利益的新興宗教をパロっていると言える。とは言え、馬鹿馬鹿しい宗教(もどき)にハマる人も別に精神異常ではなく、それなりに真剣に悩み苦しんでいるのだろうな、とも思った。

 ドタバタ風にストーリーは進むのだが、最後のほうで一変してシリアスな信仰論、貨幣論になる。ここは読み応えがあった。そして一種のどんでん返しとも言える結末で清涼感を残す。単なるパロディでなく、貨幣という化け物に対する相対化の境地が達成されている(と、書くとやや大げさだけれど)。

タグ:大森望
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