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「民宿雪国」(樋口 毅宏) [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

 この作家を読むのは初めて。タイトルは牧歌的な長閑な印象だが、これはとんでもなく激しく荒々しい波瀾万丈な(いや荒唐無稽に近い)小説。

民宿雪国

民宿雪国

  • 作者: 樋口毅宏
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2010/12/01
  • メディア: 単行本


 ある男(1915年生まれ)が戦前、戦中、戦後とたどった数奇な運命。というとありきたりな時代背景だが、天才画家となって世界的な名声を博す一方で、大量殺人者となるという、まさに破天荒極まる設定。実在の有名人(作家や芸術家、犯罪者など)も多数出てきて一種リアルさを補強しようとしており、特に後半はノンフィクション仕立ての評伝になっている。それも、怪しさ・フェイクを暴く的な。
 いや、それ、あり得ないから!と何度も言いそうになったほど。マンガ的な、つまりは例の〈ご都合主義〉なわけだが、それにしてもここまでやってくれると、いっそ清々しいと言うべきか?
 ただ、日本語としてどうなんだろう?と引っかかる箇所が散見された。基本的には読みやすく、悪文とはいえないのだが。

 この作家、「さらば雑司が谷」という作品でも同様に、新興宗教団体の教祖のトンデモなさを描いてるらしいのだが、是非読みたい!とまではならなかった。

 ところで、Twitterで2年くらい前か、この樋口氏が「小説は発刊後半年くらいは図書館に入れないで欲しい」というような発言で物議をかもしたことがあるのを記憶している。買わないフリーライダー読者に対する苦言だったわけだが、実は私はそれを意識して、借りるのを控えていた。今回のこの本は平成22年12月刊なので、十分時は経過していると思われるが。
 Twitterなど見ていると、作家は一般に「古本屋で買って…」とか「図書館で借りて…」とつぶやく読者に対しては非常に気分を害し、「そんなことをわざわざ言うな」というのが大方に共通している感覚のようで、ま、これは当然だろう。筆一本の作家プロパーで印税だけで生活するのは大変だし、正当な感情であるのは認める。一方、読者としてはまずは借りて読んでみて、良かったら次回からは買って読むことで応援する、というやり方を採ること自体は責められるべきではないと思う。
タグ:ご都合主義
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