「巨船ベラス・レトラス」（筒井康隆）

巨船ベラス・レトラス

• 作者: 筒井 康隆
• 出版社/メーカー: 文藝春秋
• 発売日: 2007/03
• メディア: 単行本

筒井康隆の最新刊。
　筒井康隆は今まで、「大いなる助走」、「文学部唯野教授」、「短篇小説講義」などを書き、現代の文学状況や文芸批評論に強い関心と研究心を保持し続けている作家だが、その最近の所感が示されている、小説形式で展開した文学論。
　〈超虚構〉という例によっての手法で描かれているのだが、ライトノベルやらケータイ小説やらの軽薄な隆盛、文学賞を若いアイドル的作家に授与して話題作りを狙う商業主義、不遇をかこつ万年文学青年の居直り的自己陶酔、などなどに対して苦言を呈しまくっている。
　文壇の様々なジャンルの売れっ子作家や編集者が登場して、それぞれの文学への思いを語るのだが、それが、「現実」と「夢幻」（＝ベラス・レトラスという巨船の中）の間を往還しつつ行われる手法はなかなか面白い。
　それにしても、作者が登場しての著作権侵害問題に関する鬱積した思いの長広舌（ここだけノンフィクション）の挿入は、ちょっとこの作品の構成上〈浮いて〉しまっているような気がする。よっぽど腹に据えかねたのはわかるが。
　それから最後の１行のオチの意味が不明だ。シュールすぎ！