「人体 失敗の進化史」(遠藤秀紀) [サイエンス]
動物解剖学者が語る、ナメクジウオから人間への進化の歴史、そこにある「設計変更」の累積の夥しさ。
最初は、あまりにも持って回った「文学」的表現、自己陶酔的レトリックの過剰さにウンザリしかけたが、内容的には非常に興味深い。脊椎動物の進化は、常に、既存のものを無理やり新たな機能に振り向けるために変形することの繰り返しだ、と言うことがよくわかった。その無理っぽさは、直立二足歩行という進化の頂点たる人体において、極点に達する。全てを既存組織のモデルチェンジでまかなった人体の奇形的な不自然さが活写されている。
最後に付け加えられた遺体科学のマニフェストは、拝金主義に毒された学問の世界に対して雄弁なプロテストである。そこには、この本の面白さを感得して初めて持ちえる説得力がある。
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