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「エピローグ」(円城 塔) [SF]

「SFが読みたい2016年版」で「月世界小説」と僅か2票差で1位に滑り込んだ、昨年度国内ベスト1・SF。

エピローグ

エピローグ

  • 作者: 円城 塔
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/09/17
  • メディア: 単行本

 2位とともに〈言語SF〉に括られるわけだが、とりわけこの2作は似ている印象がある。言語の〈言霊〉作用(=現実改変力)でパラレルワールドを生成してしまうという点でアイディア的に共通するものがあるのだ。票がこの2作に集中しつつほぼ半々に分かれたのも必然的な展開かもしれない。

 ただ、「月世界〜」のときにも感じたのだが、〈言霊〉の力に頼るのはSFとしてどうなのよ?という気持ちはある。それってファンタジーじゃないの?と。もう少し唯物的なで反証可能な仮説設定が入らないと…ねぇ、と。呪文で済めばSFは要らない、訳で。

 円城塔の今回の作品、それまでの(「屍者の帝国」は除く)に比べて、少し読みやすくなった印象はある。日本語として意味を取るのが少し楽になり、リーダビリティが上がった、と。とはいえ、そこは円上、一筋縄でいかないのは相変わらずで、やはり読みにくいし意味が取りにくいし、ややこしいし…。

 登場するガジェットにはSF的に面白そうなものがある。OTC(オーバー・チューリング・クリーチャー)とか、スマートマテリアル、イザナミシステム、…等。「ストーカー」の「ゾーン」に似た因果律・自然法則が狂った世界で、時間も空間も主体すら入り乱れて失見当識が起こり、訳の分からない展開になるので、ある程度読み進めても一本筋の通ったストーリー展開が得にくいのが、理解をそぐ理由だ。

 というわけで、最近書いた「読書の危機」をまた味わわされたのだった。こんな「凄い」作品がベスト1に来るなんて、日本のSF読者層はとてもレベルが高いのではないか? 私のような爺にはついていけそうもない気がヒタヒタとしてくる今日この頃なのである。

タグ:言語SF
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