SSブログ

「離陸」(絲山 秋子) [小説]

この作家の作品を読むのは初めて。

離陸

離陸

  • 作者: 絲山 秋子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/09/11
  • メディア: 単行本


 この作品は「ジャンル横断」、と池澤夏樹氏は毎日新聞の書評欄(2014.11.2)で言った。なるほど確かに、ミステリ(スパイもの・暗号解読もの)のようでもあり、SF(タイムトラベルもの)のようでもあり、お仕事小説(国交省のダム管理現場)でもあり、パリを舞台にした恋愛小説でもあり……、読んでて何じゃこりゃ!?どういうスタンスで読めばいいのだ?となったのは事実だ。かなり意表をつく小説と言える。

 リーダビリティは高く、読みやすいので一気読みしたのだが、読んでる途中でやはりジャンル横断の度が凄いので、戸惑いはあった。芥川賞受賞者ということで、「純文学」系の作家という先入観があったのだが、本人にはそういう意識やこだわりはないようだ。(直木賞候補にもなったこともあるし。)

 様々な要素を詰め込んであるので、当然ストーリーはかなり複雑、かと言うとそうでもなく、印象としては直線的に進行する、語り口がリアルなので、突拍子もないシチュエーションにも自然に入って行きやすいのだ。

 しかし、巨大に広げられた大風呂敷は回収されずに投げ出されてしまうのが、最後まで読んで拍子抜けさせられたところなのだが、池澤氏が
>たくさんの謎が謎のまま残るのに、読者は穏やかな納得と共にこの本を閉じる。
…と言うように「金返せ!」にはならないのは、読者の眼前に展開した奇妙で一種おおがかりな物語の印象を懐かしむように反芻しながら、ここで描かれた《時間の作用》―様々な人々の様々な死に方と、それを経験する残された人の慨嘆と受容から見えてくる、生と死のあわいに現れる時間の移ろい、それへの肯定的態度、が身に沁みてくるような感覚をもたらしている故だろうか。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。