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「君の膵臓をたべたい」(住野 よる) [小説]

一時期かなり話題になった小説。図書館に予約して半年以上かかってやっと読めた。そもそも恋愛小説は滅多に読まず、さらにこの手の(若い無名の女性作家のデビュー作みたいな、無数にあって一瞬盛り上がる)のにはほとんど手を出さない私なのだが、何故か読んでみようかという気になったのは、何と言っても目を剥くようなタイトルのせいである。

君の膵臓をたべたい

君の膵臓をたべたい

  • 作者: 住野 よる
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/06/17
  • メディア: 単行本


 カニバリズムを連想させるタイトルが尋常でない。全然そんな話ではなかったのだけれど。

 恋愛小説の中にはよくある類型としての、いわゆる〈難病もの〉に入るわけだが、普通の恋愛小説とは違う(と言えるのか、それとも色いろあるバリエーションの一つにすぎないのか、はわからない)。
 ここに登場する高校生のクラスメートの男女は、「友人でも恋人でもない」奇妙な関係である。恋愛というよりももっと高次の人と人との交わりがここにはあるように思えた。というか、ここまでピュアなのは珍しいのではないか?

 造形が特異なのはヒロインの方である。膵臓の病気で余命一年しかないのにこの底抜けの明るさはなんだろう。健気といえばあまりに健気である。

 対する根暗な少年の方はわかりやすい、ありきたりと言っても良い、そもそも対人関係を面倒がる非モテにして引きこもり的な非社交的な人間として、スクールカーストの中では最下位近くに位置づけられている人物だ。それでも読書家で精神的な内面は豊かで自分というものをちゃんと持っている。そこに彼女は惹かれたらしいのだけれど、さて、この展開のリアリティはどうか?「ご都合主義!」と非難したくなるほど無理筋ではない。いや十分あり得る、と言っていいのではないか?

 むしろ強引な振る舞いが目立つヒロインの行動こそ最大の不思議であり魅力だろう。女性作家でありながら、男の方の立場での一人称で書いたのは(男性心理に対する造詣で)相当な自信の現れなのだろうか?とも思ったが、いや、物語の構造的に、謎に取り組む側の人物の手記という形を取らざるを得なかったのだろう。
 最後の遺書(種明かし)では、逆転して女の方の立場になって締めざるを得なくなった訳だ。

 後半では滂沱の涙、であった。(もともと涙腺は緩いのだが、ここに来て歳のせいかさらに緩くなっているのだ。)

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