「叛逆航路」(アン・レッキー) [SF]
新人のデビュー長編としては、ギブスン『ニューロマンサー』の四冠、バチガルピ『ねじまき少女』の五冠を凌ぐ史上最多となる七冠と、英米の主要SF賞を総ナメの超話題作。
これは〈読まずに死ねるか〉ものかと(それでも買わずに図書館予約して、意外に早く借りられた。最近「隣接地域住民枠」で利用者登録した足立区立図書館からの記念すべき借り出し本第1号だ)、早速読んだが結構時間がかかってしまった。
内容に関しては、ここで自分で書くのもしんどいので、ここ(渡邊利道/アン・レッキー『叛逆航路』(赤尾秀子 訳)解説(全文))に詳しく載っているので、そちらを参照されたい。
その中に、こういう断り書きがある。↓
>物語の展開上ブレクの来歴と復讐の理由、そしてその方法が少しずつ明かされていくスタイルになっているために、この文体とあいまって最初は何が起こっているのか、どういう世界なのかもよくわからないかもしれないが、丁寧に読み進めていけば、途中から一気呵成にぐいぐい引っ張り込まれていく
確かに半分くらいまではとても分かりにくくややこしく、なんじゃこれは、酷い翻訳だ!さては「ニューロマンサー」や「ねじ巻き〜」と同じ轍を踏むのか?と不安になった。そう、私には、この大量受賞で先行する二つの評判作を読んでみて、同じように読みにくかったトラウマがあるのだ。鬼門と言うべきか。また三度目を繰り返すことになるのか、という予感いや悪寒。
話題作はホットなうちに邦訳して出版しないと時機を逸する、という理由で翻訳作業を急ぎ、十分に推敲されない生煮えのまま世に出てしまうからなのか?などと考えたりもしたことがある。
しかし、この解説の通り、半分いや2/3を過ぎた辺りからだんだん話の全体像が見えて来て、さらに展開自体も急を告げてきて面白くなったのだった。ここにきてやっと(原題は「属躰の正義」だったのに)邦題が「叛逆航路」と全然違う言葉になっている理由にストーリーが追いついた。もっとも直訳タイトルでは全くの意味不明だろう(不明でも「皆勤の徒」みたいに十分成功作もあるけどね)。
それにしても、ユニークな作品である。上記リンク先解説ともダブるが、「属躰」という「屍者の帝国」のようなアイディアではある(まさかあれからヒントを得たわけではあるまい)が、こちらは主人公としての内面、意識、思考、行動が克明に描かれる、そのユニークさ。
そしてジェンダーの無い世界の言語のあり方。全てが女性形で表現されるので(特に前半で)分かりにくさを倍加させていたのだが、一種の〈曖昧さの豊かさ〉みたいな効果もあったりする。
他言語への翻訳では皆相当苦労したらしく、それを各国語にわたって翻訳者にインタビューして言語ごとの苦労の違いを調べた記事があって面白い。↓
これを読むのは本作を読んでからのほうがいいだろう、多分。
「彼女はたぶん男だろう」――あらゆる登場人物が女性形で呼ばれるアン・レッキー『叛逆航路』、5カ国語でどう訳す?
これは〈読まずに死ねるか〉ものかと(それでも買わずに図書館予約して、意外に早く借りられた。最近「隣接地域住民枠」で利用者登録した足立区立図書館からの記念すべき借り出し本第1号だ)、早速読んだが結構時間がかかってしまった。
内容に関しては、ここで自分で書くのもしんどいので、ここ(渡邊利道/アン・レッキー『叛逆航路』(赤尾秀子 訳)解説(全文))に詳しく載っているので、そちらを参照されたい。
その中に、こういう断り書きがある。↓
>物語の展開上ブレクの来歴と復讐の理由、そしてその方法が少しずつ明かされていくスタイルになっているために、この文体とあいまって最初は何が起こっているのか、どういう世界なのかもよくわからないかもしれないが、丁寧に読み進めていけば、途中から一気呵成にぐいぐい引っ張り込まれていく
確かに半分くらいまではとても分かりにくくややこしく、なんじゃこれは、酷い翻訳だ!さては「ニューロマンサー」や「ねじ巻き〜」と同じ轍を踏むのか?と不安になった。そう、私には、この大量受賞で先行する二つの評判作を読んでみて、同じように読みにくかったトラウマがあるのだ。鬼門と言うべきか。また三度目を繰り返すことになるのか、という予感いや悪寒。
話題作はホットなうちに邦訳して出版しないと時機を逸する、という理由で翻訳作業を急ぎ、十分に推敲されない生煮えのまま世に出てしまうからなのか?などと考えたりもしたことがある。
しかし、この解説の通り、半分いや2/3を過ぎた辺りからだんだん話の全体像が見えて来て、さらに展開自体も急を告げてきて面白くなったのだった。ここにきてやっと(原題は「属躰の正義」だったのに)邦題が「叛逆航路」と全然違う言葉になっている理由にストーリーが追いついた。もっとも直訳タイトルでは全くの意味不明だろう(不明でも「皆勤の徒」みたいに十分成功作もあるけどね)。
それにしても、ユニークな作品である。上記リンク先解説ともダブるが、「属躰」という「屍者の帝国」のようなアイディアではある(まさかあれからヒントを得たわけではあるまい)が、こちらは主人公としての内面、意識、思考、行動が克明に描かれる、そのユニークさ。
そしてジェンダーの無い世界の言語のあり方。全てが女性形で表現されるので(特に前半で)分かりにくさを倍加させていたのだが、一種の〈曖昧さの豊かさ〉みたいな効果もあったりする。
他言語への翻訳では皆相当苦労したらしく、それを各国語にわたって翻訳者にインタビューして言語ごとの苦労の違いを調べた記事があって面白い。↓
これを読むのは本作を読んでからのほうがいいだろう、多分。
「彼女はたぶん男だろう」――あらゆる登場人物が女性形で呼ばれるアン・レッキー『叛逆航路』、5カ国語でどう訳す?
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