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「その女アレックス」(ピエール ルメートル) [ファンタジー/ホラー/ミステリ]

 今年のミステリベストで6冠『週刊文春2014年ミステリーベスト10』『このミス』『ミステリが読みたい!』『ハヤカワ ミステリマガジン』『IN☆POCKET文庫翻訳ミステリー』『英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞』フランスの『リーヴル・ド・ポッシュ読書賞』)を達成したという、史上初で超弩級のお勧め作品だ。凄すぎる評価ではないか!

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

  • 作者: ピエール ルメートル
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/09/02
  • メディア: 文庫



 というわけで、普段はミステリはあまり読まない私でも、これは「読まずに死ねるか」「読まずば二度死ね」と早速例外的に自腹で買って読んだ(最近はまず滅多に本を買うことはないのだ、自慢じゃないが)。

 なるほど確かに、面白かった。翻訳も良くて読みやすいし、脳内映像喚起力も強い。

 第1部の監禁の描写は圧巻だ。小さな木箱の檻に監禁され虐待される女と、その誘拐事件を手探りで捜査する警察の動きが交互にリアルタイムで進行する構成は緊迫感がある。相当「えぐい・グロい」虐待描写なので、そういうのが苦手な人にはお勧めできないのだけれど。

 警察側の各登場人物のキャラの立て方がとてもユニークなのだが、ちょっと極端に個性的過ぎるきらいがあるのではないか? ま、そこが面白いんだけど(特に警察側のチーフのカミーユのトラウマに苦しむ様子)。それに対して主人公の女アレックスの方は正体がさっぱりわからないまま進行するのがもどかしさと興味をかきたてる。なんだ、なんだ、なんなんだ?!と。

 第2部では、辛くも脱出したアレックスのその後の仰天するような行動が描かれる。なんじゃ、これは!どんでん返しもいいところだ。
 さらに、第3部でまたどんでん返しが起こる。いやはやなんとも。

 しかし、ちょっとずるいところがあるんじゃないか?とも思った。ネタバレになるので書かないが、最後の方での展開の書き方が、読者に誤った情報を与えているではないか。ここは得心の行かないところだった。

 鳴り物入りで期待したほどに面白かったか?と言うと、やや微妙な感じだ。いや確かに面白いし、構成に〈新機軸〉なところもあるんだろう(ミステリに詳しくないのでわからないのだが)。
 しかし、そんなに大騒ぎするほど空前の大傑作なんだろうか? そうは思えない。これが世界最高水準のミステリで、これ以上は無いと言うのなら、残念ながら他にもっとミステリを読みたい、という気は起こらない。つまり「見切ってしまった」ということになってしまうのではないか?
 という…、非ミステリファンの感想でありました。

〈追記〉
 この本のレビューをググって見たところ、オチに関して誤読していたことがわかった。orz
 なるほどそういうことならば、印象は少し変る。全体の基調はそのままだけれど。

タグ:ミステリ
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SGW

警察も真実を承知の上で真の悪人を許さないという小説ならではの結末と読みました。
アレックスは被害者→加害者→被害者と展開しますが、東野圭吾のどんでん返しに負けているような気がしました。
第二部の最後でアレックスの死ぬところを詳しく書きすぎたからではないかと感じました。
by SGW (2015-01-27 17:21) 

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