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「鍵のない夢を見る」( 辻村 深月) [小説]

第147回直木賞受賞作。ちょうど1年前の7月31日に図書館に予約したのだが、賞を取ったためか異様にオーダーが多く散々待たされ、ようやく順番が回ってきた。こんなに待つなんて気が長い奴だな、と思われるかもしれないが、待ってる間にもいくらでも読む本はあるので、別に忍耐強いわけではない。人気の高い本はまだ何冊か同様な状況にある。

鍵のない夢を見る

鍵のない夢を見る

  • 作者: 辻村 深月
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/05/16
  • メディア: ハードカバー


 ネットでの感想をざっと見ると「暗い」という意見が多い。「これで直木賞なの?」というのもあった。まぁ直木賞は単発の作品よりもそれまでに多くの作品があり、相当な実績が評価されて授賞するものだろうから、代表作と言うよりはたまたま最近の作品が該当作とされたのだろう。彼女の作品は「オーダーメイド殺人クラブ」しか読んでないので、あまりはっきりしたことは言えないが。

 で、確かに暗い、異様な雰囲気の作品群だ。全て女性が主人公で、恋愛絡みの話が多いが、犯罪がらみの話でもあるので、連想したのはあの唯川恵の「病む月」だ。つまり「異形恋愛小説コレクション」っぽい。

●「仁志野町の泥棒」…小さな町での牧歌的な小学生女子の交友かと思いきや、母親の盗癖が明らかになり、さらには娘までも。事を荒立てない田舎の人々。なし崩しに消えていく記憶という虚をつく結末。

●「石蕗南地区の放火」…結婚をせっつく田舎体質にうんざりしている女の周囲で続く火事の放火犯の意外な正体。女の妄想・邪推が空回りする可笑しさ、トホホ感。

●「美弥谷団地の逃亡者」…出会い系サイトで知り合ったDV男との只の海水浴行きが実は…。くらたまの「だめんず」を想起する。この非日常を日常化してしまう感性の鈍感さというか神経には慄然とする。

●「芹葉大学の夢と殺人」…これも「だめんず」系の非現実的な夢を抱いた男とのもつれた恋愛。その果ての破綻の壮絶さ。

●「君本家の誘拐」…育児ノイローゼに追い込まれるディテール、その心理描写がリアル。最後のどんでん返しが効いている。

…と、あまり後味のいいものではなかったが、ストーリーテリングは手慣れたもので、流石である。異様なものをただ異様に赤裸々に描くだけではなく、一種共感と言うか、同情を持って捉えてもいるように思われた。
タグ:恋愛小説
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藍色

どれもありそうな事件に、ぐいぐい引き込まれて読み進みました。
読みやすく、あっと思うような展開の話もあって面白かったです。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
by 藍色 (2015-10-20 15:55) 

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