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「和菓子のアン」(坂木 司) [小説]

店頭で平積みになっているのを目にして、読んでみようかと思い図書館に予約、2ヶ月くらいで借りられた。この作家のは初めて。

和菓子のアン (光文社文庫)

和菓子のアン (光文社文庫)

  • 作者: 坂木 司
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/10/11
  • メディア: 文庫



 まぁなんというか、少女小説。なにしろ、題材がスィーツ!なんだから。しかし、洋菓子でなく和菓子というのが「渋い」かも。18歳の女の子(名前が杏子(きょうこ)、杏(あんず)を略してあだ名が「アン」、赤毛のアンと、あんこの餡にかけている)の一人称で書かれていて、文体がもう〈なりきって〉おる。今時の若い女の子の口語調で語られるので、リアルで迫真力がある。やや演出過剰感はあるけれど…、読みやすくはあった。

 「ひきこもり探偵シリーズ」(一種の安楽椅子探偵ものか?)というのでデビューしたらしいこの作者、他に「お仕事系日常の謎シリーズ」をいろんな職場(クリーニング店、宅配業者、歯科医院、安宿など)を舞台にした、殺人事件でない、お客さんのほんのちょっとした謎とも言えない(の存在に敏感に気がつき、ややおせっかい気味に)解き明かす、その鮮やかなお手並み、が本作の一つのキモなのだが、それはそれとして、題材に取り上げられた職種のプロ的視点からの薀蓄(この本の場合は和菓子の成り立ち、歴史、エピソードなど)がうまくストーリー中に織り込んで展開されているので、勉強になる。図版や写真が無いのがイマイチだけれども。どの世界だってそうなのだが、和菓子というものの世界もなかなかに奥が深いようだ。それを活き活きと描き出している点で、本書は出来がいい、と言える。成長小説でもあるし。
 もっとも、巻末の参考文献一覧がちょっとショボい。入門書的なものが3冊のみ。そのわりには、結構よく調べた上で書いてるじゃないか、と感じさせられた。これを読んで和菓子ファンになる人も居るんじゃないだろうか?(但し甘党に限る)
タグ:ミステリ
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