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「陰謀論とは何か」(副島 隆彦) [ノンフィクション]

 このタイトルでは、「陰謀論」というものの実態、由来、論理などを客観的・批判的に分析する本なのかと思うのが普通だろうが、何と日本の代表的な陰謀論者とされている人物の手になる、弁明的な陰謀論ガイドなのであった! どひゃ〜〜! これは面白いかもしれない、と手に取った。
(そういう趣旨なら「『陰謀論』とは何か」というタイトルにすべきではないかと思うが)

陰謀論とは何か (幻冬舎新書)

陰謀論とは何か (幻冬舎新書)

  • 作者: 副島 隆彦
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/09/28
  • メディア: 新書



 著者は「人類の月面着陸は無かったろう論」という著書で、2005年度トンデモ本大賞を受賞している。さらに2011年にはトンデモ本の「ベストオブベスト」賞まで貰っている。つまり今まで出た夥しいトンデモ本の中で最高の評価を受けているのだ。もっとも、〈と学会〉のことはまるで知らなかったようで、「山本弘なる何を職業にしているのか分からない不思議な人物…彼は耳の横で両手を開いてベロベロベーという仕草を…ピョンピョンピョンと跳ねながら」などと書いている。トンデモ扱いである。

 いろいろな陰謀論が紹介されている(主な出典はWikipediaである。というか転載しまくりである。この辺でなんかレベルが分かってしまったような気がする)のだが、「宇宙人が地球に潜入して陰で世界を操っている」とか、「東日本大震災は地震兵器だ」みたいな〈荒唐無稽〉なものはさすがに排している。著者がもっぱら主張するのは、ロスチャイルド、ロックフェラーなどの財閥、フリーメーソン、イルミナティなどの勢力の確たる存在。その歴史的な発展の経緯が簡単に語られる。つまり陰謀論の中でもどっちかと言うと「真っ当」な方なのであろう。それなりに根拠があり、「権力共同謀議(コンスピラシー)」と呼ぶべきだと主張する。

 しかし、どうにも話が抽象的で曖昧で大雑把、具体的な検証がまるでなされていない。こいつら怪しい!なにかやってるに違いない、みたいなことしか言わないのでどうにも話の接ぎ穂が見えない。この世は金が全てで、金を持ってる奴らがいろいろな表の組織の人事に介入して、世界を牛耳っているのだ、とか。

 まぁ、この世に一切謀略がないなんて私も思わないが、以前「似非科学=知的欲求+知的怠慢」でも書いたように、陰謀論は、歴史や経済を学ぶ労力を厭って、安直な説明に飛びつく〈知的怠慢〉にすぎないと思っている私には、何の説得力もなかった。

 以前小室直樹氏の追悼番組Ustで宮台真司氏と対談していたのを見たことがあるが、なにやら異様な(つまりはトンデモっぽい)雰囲気を感じた。
 彼が福島第一原発に近づいて突撃レポートするUstも見た。数キロ先に原発を臨む場所に立って、「こんな近くに来ても体には何も感じません。大丈夫です。もう収束して放射能は危険じゃありません」などと叫んでいた。駄目だこりゃ!と思った。本書の中のアポロ計画の話でも「月は真空なんだぞ、そんなところに行けるわけがないだろう」などと書いている。
 どうもこの人、理系方面にはからっきし弱いようだ。

 それと文体の揺れが激しい。「だ・である」調と「です・ます」調が平気で混ざって書かれているので、読んでて違和感ありまくりである。他人様に読ませる文章とは思えない。というわけで、殆ど益のない読書だった。
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