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「黄金比はすべてを美しくするか?」(マリオ リヴィオ) [サイエンス]

「黄金比」というものはよく知らなかった。美術の教科書でビーナス像だか何かの名画で輪郭に沿った方形がある位置で区分けされた説明図を見たような記憶はあるが、文化的な一種の意匠のような印象を持っていて、あまり気にしてなかったのだ。それがかくも数学的に面白い奥深い数のことだったとは、迂闊!

黄金比はすべてを美しくするか?―最も謎めいた「比率」をめぐる数学物語

黄金比はすべてを美しくするか?―最も謎めいた「比率」をめぐる数学物語

  • 作者: マリオ リヴィオ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本

 著者は以前読んだ「神は数学者か?」を書いた人で、本書はそれより以前に書かれたもの。最近文庫化されて存在に気がつき、図書館に予約して単行本で読んだ。
 黄金比φ(ファイ)はある線分をaとbに分けた時、a:b=(a+b):aとなるような比率のこと。bを1とおいて、この式を内項の積=外項の積により方程式に変換すると、a^2−a−1=0となり、これを解くとa=(1+√5)/2、つまり 1.61803…という値(無理数)が得られる。

 本書は豊かな学識と資料踏査でφの歴史を語る。ピタゴラスから始まり、その神秘的なまでの奇妙な性質を検証し、建物や美術に及ぼした影響、その「応用」の真偽(概ね否定的だったりするのだが)を厳密に精査している。

 そして、さらに意外な展開は(あのオウムガイの螺旋で有名な)フィボナッチ数列で〈n個目の数とn+1個目の数の比率がφに近づく〉ということ。素数との親和性、またフラクタル幾何学とも関連してくる、ということにまで及ぶ。これはビックリ。
 eやπもそうだが、一見何の関係もない数学的事象が思いがけず結びついているこの不思議な照応関係の妙!
 単なる〈美〉などという次元ではなく(勿論昔から美術や音楽などにとても有効なものではあったのだが)、それをはるかに超えて数理の神秘に迫っている。
 最終章のタイトルは「神は数学者か?」である。この次の著作に至るきっかけがここにはあったのだ。
タグ:数学
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