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「桐島、部活やめるってよ」(朝井 リョウ) [小説]

 平成元年生まれの作者が早稲田大学文化構想学部(ってなに?)在学中の2009年、小説すばる新人賞を受賞した作品(今年8月には映画も公開予定とか)。
 2年前に出版された本だが、その頃から店頭で目についていて、ちょっと心の隅に引っかかっていた。このタイトルはなかなか秀逸であり、これだけで中身(舞台やら登場人物やら雰囲気までも)が大体想像がついてしまうではないか。

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

  • 作者: 朝井 リョウ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/02/05
  • メディア: 単行本



 その通り、この作品は高校生群像、特に部活動に関わるさまざまな男女の心の機微を描いたもので、野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部にそれぞれ所属する生徒たちの日常を、章ごとに各人を主人公にして一人称で語っていくオムニバス形式。クラスや部活を共にする交友関係が描かれていくので、重なり合いつつ、同じ出来事が別の視点で語られ直されたりする手法が面白い。
※登場人物紹介はWikipedia参照。

 それぞれが打ち込む部活動の楽しさや喜びさらに悩みが描かれて、まだまだ拙い不器用で惑いの多い、甘酸っぱい青春だなぁ、と懐かしい思いにさせられる。勿論、恋愛模様もある。ここらへんは今どきの高校生の実態が描かれて、世代差を感じさせるところ。

 最も注目すべきところは全編に通底する〈スクールカースト〉という枠組みの中での様々な心の揺らぎの要素。以前、「オーダーメイド殺人クラブ」(辻村 深月)の中でも出て来た、またしてもスクールカーストである。もぉ本当にこういう、「見た目が九割」の風潮の中にみな囚われて、ごく普通の一般的な状況になっちまっているのか、とやりきれない気持ちにはなる。
 この作品の中でもそれが当たり前の所与の条件となっている、つまり前提として描かれてはいるのだが、それでもそれをよしとしない作者の意志が感じられる。特に最後の主人公のいらだちにそれが現れる。
 登場人物一人ひとりは結構みんなナイーブな心を持っている。それなりに健気な真摯な心持ちもある。この作品は彼ら彼女らへの厳しい批判でもあり、これからの生き方へのエールでもあるように感じた。読後感は良い。
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ask

映画.comの記事↓
「橋本愛も絶賛!女心のわかる作家・朝井リョウの本音に迫る」
http://eiga.com/news/20120223/8/
by ask (2012-03-19 21:11) 

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